第6回日本地域理学療法学会学術大会

講演情報

ポスター

ポスター3

[P] ポスター3

2019年12月15日(日) 12:30 〜 13:30 ポスター会場 (東館3階 D会議室)

[P-84] 若年脳梗塞職員における就労前後の身体機能の変化

*高橋 沙穂理1、武田 哲1 (1. (一財)総合南東北病院 南東北通所リハビリテーションセンター)

キーワード:脳梗塞、身体機能、就労

はじめに・目的
事例は脳梗塞発症後、障がい者雇用としての就労を目標に通所リハビリを利用した。発症から約3年後、通所リハビリに障がい者雇用として入職し、利用者から共に働く仲間となった。事例の就労前後の身体機能の経過を追い、就労により身体機能の向上がみられたため以下に報告する。

方法
事例は40歳代男性、要介護1、温厚で真面目な性格。H.28年1月にアテローム血栓性脳梗塞(左放線冠)発症後、回復期病院経由し同年5月に退院。今後の目標として、バスでの外出や就労を希望され、訪問リハビリ週1回、通所リハビリ週2回利用。H.29年4月に介護保険更新し要支援1となり、訪問リハビリ終了、通所リハビリ週1回へサービス内容変更。障がい者就労・生活支援センターの紹介で、同年11月から就労継続支援B型を週4回利用された。H.30年11月に当院内で障がい者雇用の話が持ち上がり、通所リハビリ管理者の推薦で同年12月に通所リハビリに入職した。就労開始時の身体機能は、身長169cm、体重78.7kg、BMI:27.6、右片麻痺(Brs.Ⅴ)、プラスチック短下肢装具使用し屋内独歩・屋外T字杖歩行自立。ADL自立し、FIMは125点であった。就労時間は6時間30分から開始。通勤手段はバスを利用。仕事内容は利用者へのお茶出し、事務作業補助、集団体操補助、環境整備とした。身体機能の評価として、四肢筋量・5m歩行・TUGを就労前・就労4か月後に、仕事日の月平均歩数・握力・簡易上肢機能検査を就労1ヶ月後・就労4か月後に測定した。

結果
四肢筋量は就労前が25.4kg、就労4ヶ月後が27.0kgであり、就労4ヶ月後の四肢筋量が就労前に比べ増加した。5m歩行とTUGは就労前後で著変なかった。就労時間はH.31年2月から8時間に延長となり、仕事日の月平均歩数は就労1ヶ月後が6833歩、就労4ヶ月後が11583歩と増加した。握力は就労1ヶ月後が右17.0kg、左39.7kg、就労4ヶ月後が右27.7kg、左37.7kg、簡易上肢機能検査は就労1ヶ月後が右61点、左98点、就労4ヶ月後が右71点、左98点であり、右上肢機能が向上した。事例はバス通勤であり、仕事に慣れるにつれ活動量も増えていった。また、仕事内容として、急須でコップにお茶を入れる、ポットを洗い持ち運ぶ、ハサミで紙を切る、定規で線を引くなど、両手作業の機会が増え、右上肢の使用頻度が上がったことから、身体機能向上につながったと考えられる。

結論
今回の事例を通して、脳梗塞発症から3年経過後も、就労という社会参加により身体機能向上が期待できることが示唆された。特に、通勤や両手作業など、活動機会の増加が身体機能向上に寄与すると考えられ、活動・参加に対するアプローチの重要性を再認識した。

【倫理的配慮、説明と同意】
当報告は倫理的配慮に注意し、個人のプライバシーが特定できる内容は記載していない。対象者には当報告の趣旨および内容について口頭で説明し同意を得ている。