第6回日本地域理学療法学会学術大会

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ポスター

ポスター4

[P] ポスター4

Sun. Dec 15, 2019 1:40 PM - 2:40 PM Poster venue (East Building 3rd floor, D Conference Room)

[P-85] 訪問リハビリテーションを利用する要支援・要介護高齢者の健康関連QOLについて

*永井 麻衣1,2、樋口 由美1、藤堂 恵美子1、北川 智美1、安藤 卓1、上田 哲也1、畑中 良太1、村上 達典1、上月 渉1、北村 綾子1 (1. 大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科、2. 医療法人健康会 第二南診療所)

Keywords:高齢者、健康関連QOL、訪問リハビリテーション

【はじめに・目的】
超高齢社会において、高齢者の健康関連Quality of Life(以下、HQOL)を維持した健康寿命の延伸が課題である。HQOLに対して、訪問リハビリテーション(以下、訪問リハビリ)のもたらす影響を検討するため、本研究では訪問リハビリを利用する要支援・軽度要介護高齢者を対象に、HQOLと身体機能、ADL自立度、生活空間との関連を検討した。
【方法】
対象は2018年12月~2019年5月にA診療所の訪問リハビリを3ヶ月以上利用した65歳以上の要支援・軽度要介護高齢者10名(平均年齢86.9±8.9歳、女性7名)であった。立ち上がり動作に介助が必要な者、研究の主旨を理解出来ない者は除外し、基本属性として性、年齢、介護度を診療録より収集した。HQOLはSF-8スタンダード版(国民標準値50)を用いて測定し、身体的サマリースコア(以下、PCS)と精神的サマリースコア(以下、MCS)を算出した。身体機能評価は5回立ち上がりテストを用い、立ち上がり時は対象者の両手を膝上に置き動作を補助することを許可した。ADL自立度はFunctional independence measure(以下、FIM)を用い、18~126点内で合計点を算出した。生活空間はLife-Space Assesment(以下、LSA)を用い、過去4週間における活動範囲(寝室以外の部屋から町外まで)と頻度、自立度を0~120点にてスコア化した。統計解析は、SF-8と関連する項目を明らかにするためSpearmanの順位相関分析を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者の介護度は、要支援2が4名、要介護1が5名、要介護2が1名であり、主疾患は脳出血2名、圧迫骨折2名、心不全2名、廃用症候群2名、大腿骨頭骨折1名、脊柱管狭窄症1名であった。SF-8の平均値はPCSが43.0±5.1、MCSが47.1±5.4であり、いずれも国民標準値を下回った。5回立ち上がりテストの平均値は25.1±6.3秒(15.7秒-33.3秒)であった。FIMの平均値は105.4±12.8点(80点-125点)、LSAは33.5±16.0点(15点-64点)であり、ADL自立度は比較的高いが、生活空間は狭小化していた。Spearmanの相関分析の結果、年齢とPCS(r=0.17、p=0.64)、MCS(r=0.28、p=0.44)にはそれぞれ有意な相関がみられなかった。PCSと5回立ち上がりテスト(r=-0.71、p=0.02)、LSA(r=0.68、p=0.03)との間には有意な強い相関を認めたものの、FIM(r=0.11、p=0.76)との間にはほとんど相関を認めなかった。MCSは5回立ち上がりテスト(r=-0.27、p=0.46)、FIM(r=-0.48、p=0.16)、LSA(r=-0.15、p=0.69)、いずれも有意な相関がみられなかった。
【結論】
訪問リハビリを利用する要支援・軽度要介護高齢者において、身体機能の低下と生活空間の狭小化が、身体面のHQOLの低下と関連することが分かった。訪問リハビリによる身体機能への直接的な介入や生活空間を広げるための多職種連携のマネジメント等が、要支援・要介護高齢者における身体面のHQOLを向上させる可能性が示唆された。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は、大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科の研究倫理委員会の承認(2018-106)を得て実施した。全対象者には説明を行い、同意を得た。