第6回日本地域理学療法学会学術大会

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ポスター

ポスター4

[P] ポスター4

Sun. Dec 15, 2019 1:40 PM - 2:40 PM Poster venue (East Building 3rd floor, D Conference Room)

[P-94] 脳血管障害による運動要因の摂食・嚥下障害を呈した一症例
〜他職種連携を図り、摂食・嚥下障害に対し理学療法士が早期介入を行った結果〜

*伊渕 彰1、和田 はるか1 (1. 株式会社ルネサンス)

Keywords:訪問リハビリ、多職種連携、摂食・嚥下障害

【はじめに・目的】
今回、脳血管障害を発症し、軽度の右片麻痺、摂食・嚥下障害を呈した症例を経験した。高齢者集合住宅に住んでいる知人から、直接セラピストが本症例の依頼を受け、同施設内の介護支援専門員に相談。介護支援専門員と連携を取り、初回面談より看護師と理学療法士が同行した。本症例の摂食・嚥下障害の要因を面談で得られた情報と経過を元に多職種で検討。主治医に報告し、理学療法士と看護師が早期より介入を開始した。他職種と連携し症状が悪化する前に介入を開始したこと。また、摂食・嚥下障害の要因に対する理学療法士の評価とアプローチが摂食・嚥下障害の改善に繋がったと考え、以下に報告する。
【方法】
対象は 80歳代、男性、要支援 2。2003年、2009年に脳梗塞。2016年に橋出血。2017年に左被殻、内包後脚領域梗塞の診断。急性期、回復期病院でリハビリ訓練を経て自宅退院 ( mRS2) 。軽度右片麻痺 : arm Barre(-)、Mingazzini (-) stroke impairment assessment set ( 以下 : SIAS ) 上肢 4-5・下肢 4-5-5・体幹機能 2−2 。体幹機能 : trunk control test ( 以下 : TCT ) 100点。摂食・嚥下障害に対しては言語聴覚士が介入していた。退院直後は経過良好であったが、退院後 6か月目から摂食・嚥下障害の症状が増加。その状況の話を聞いた利用者知人から相談を受けた。摂食・嚥下障害に対しては、インテークの際に質問紙・状態観察を行い、運動要因の影響の可能性もあることを主治医に報告。訪問看護師と協力し、嚥下サポートチームとして評価・介入を開始した。評価・治療経過は、摂食・嚥下障害評価表(摂食嚥下リハ学会)を用いて効果判定を行った。
【結果】
摂食・嚥下障害評価表(摂食嚥下リハ学会)初回評価: 頸部可動域制限 前屈少し動く・後屈少し動く・回旋少し動く、RSST 2回 / 30秒、MWST 3点。SIAS 上肢 4-5・下肢 4-5-5・体幹機能 2−2。介入 1か月目:頸部可動域制限なし、RSST 3回 / 30秒 MWST 5点。SIAS 上肢 4-5・下肢 4-5-5・体幹機能3−2。介入 3か月目:RSST 3回 / 30秒、MWST 5点。SIAS:上肢 5-5・下肢5-5-5・体幹機能 3−3。介入後 3か月で体幹機能の向上に伴い、摂食・嚥下機能の改善が得られた。
【結論】
今回、運動要因の摂食・嚥下症障害者に対して理学療法士が早期から介入した結果、摂食・嚥下機能の改善が得られた。本症例の摂食・嚥下障害という問題の中に潜在していた運動要因の評価を顕在化したことで、多職種との連携がスムーズに進んだ。その結果、重篤化を防ぎ早期改善に至ったと思われる。また、脳血管障害の嚥下障害に関する運動要因は舌骨上筋群、頸部伸展可動域、体幹後弯度といわれており、運動要因に対する理学療法アプローチが効果的であった。本症例の摂食・嚥下障害に対し、効率的で効化的なアプローチを行えたことが改善に繋がったのではないかと考える。

【倫理的配慮、説明と同意】
対象者には、ヘルシンキ宣言に基づき口頭により、予め研究の目的および内容を説明し、本研究への参加の同意を得た。