[P-97] 訪問リハビリテーション利用者の主介護者に対して介護負担感と介護肯定感の評価から目標や介入内容の見直しを図った事例
Keywords:介護肯定感、介護負担感、訪問リハビリテーション
【はじめに,目的】
要介護者が在宅生活を継続するためには,主介護者の介護負担感を軽減させ,介護肯定感(介護を行うことで得られる生活の質や豊かさの向上に対する認識)(Kramer BJ,1997)を高めることが重要である.今回,訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)利用者の主介護者に対して介護負担感と介護肯定感を状態変化が生じた前後で評価を行い,訪問リハの目標や介入内容の見直しを図った事例について報告する.
【方法】
事例は肺気腫を呈している要支援2の82歳男性であり,妻と2人暮らしであった.屋内は伝い歩きにて自立し,屋外は歩行車歩行にて休憩を挟み50m程度可能であった.ADLは更衣,トイレ,入浴は修正自立であり,妻は半日程度の外出は時折行っていた.妻は80歳代であり,自主練習や生活への指導に対する理解は良好であった.訪問リハでは自主練習指導,歩行練習などを中心に介入していたが,介入16ヶ月後に左手の脱力を自覚し,頸椎症の疑いで入院となった.退院したのち介入18ヶ月後に訪問リハは再開(以下,再開時)となったが,左手指は筋力低下を認め,更衣,トイレ,入浴において軽介助を要し,歩行においても動揺の増大を認めた.入院前より妻が見守りや手伝いを行っていたことから,介護に関しての評価を入院前の介入14ヶ月後(以下,入院前)と再開時において実施した.介護負担感の評価として負担と感じている部分についての記載と,介護を継続することに妻がいかに肯定的に捉えているかが生活の継続には重要であると考え,介護肯定感の評価として介護肯定感評価尺度(櫻井ら,1999)を用い,質問紙を妻に配布し,回答とその具体内容を聴取した.
【結果】
入院前では,介護負担感は日常生活で人的介助を要することがほぼなく,負担は少ないとの回答があった.また,介護肯定感評価尺度は48/56点と高値を示し,最後まで家で過ごせるようにしたいとの回答があった.再開時では,介護負担感は介助を要すことが増えたため妻は外出しにくくなり,生活において介護にあてる時間が増加し,助けること(人的介助量)が増えたとの回答があった.介護肯定感評価尺度は45/56点と大きな変化はなかった.これらから,再開時も介護への継続意思は保たれているものの,介護負担感は増加していることから,まず介護負担感の軽減を目標に,ケアマネジャーと連携をとりADLの動作方法の再検討や手すり等支持物の導入を検討し,通所介護を半日型から1日型に変更した.
【結論】 訪問リハ利用者の主介護者に対して介護負担感だけでなく介護肯定感も評価することで,介護への継続意思や満足感など肯定的側面も捉えたうえで考察が可能となると考える.また,介護負担感と介護肯定感は状態変化などにより変化を伴う可能性があり,定期的に評価を行う必要があると考える.
【倫理的配慮、説明と同意】
本報告に際して,プライバシーおよび個人情報の保護には十分に配慮し,症例本人に対して口頭と書面による十分な説明と承諾を得ている.
要介護者が在宅生活を継続するためには,主介護者の介護負担感を軽減させ,介護肯定感(介護を行うことで得られる生活の質や豊かさの向上に対する認識)(Kramer BJ,1997)を高めることが重要である.今回,訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)利用者の主介護者に対して介護負担感と介護肯定感を状態変化が生じた前後で評価を行い,訪問リハの目標や介入内容の見直しを図った事例について報告する.
【方法】
事例は肺気腫を呈している要支援2の82歳男性であり,妻と2人暮らしであった.屋内は伝い歩きにて自立し,屋外は歩行車歩行にて休憩を挟み50m程度可能であった.ADLは更衣,トイレ,入浴は修正自立であり,妻は半日程度の外出は時折行っていた.妻は80歳代であり,自主練習や生活への指導に対する理解は良好であった.訪問リハでは自主練習指導,歩行練習などを中心に介入していたが,介入16ヶ月後に左手の脱力を自覚し,頸椎症の疑いで入院となった.退院したのち介入18ヶ月後に訪問リハは再開(以下,再開時)となったが,左手指は筋力低下を認め,更衣,トイレ,入浴において軽介助を要し,歩行においても動揺の増大を認めた.入院前より妻が見守りや手伝いを行っていたことから,介護に関しての評価を入院前の介入14ヶ月後(以下,入院前)と再開時において実施した.介護負担感の評価として負担と感じている部分についての記載と,介護を継続することに妻がいかに肯定的に捉えているかが生活の継続には重要であると考え,介護肯定感の評価として介護肯定感評価尺度(櫻井ら,1999)を用い,質問紙を妻に配布し,回答とその具体内容を聴取した.
【結果】
入院前では,介護負担感は日常生活で人的介助を要することがほぼなく,負担は少ないとの回答があった.また,介護肯定感評価尺度は48/56点と高値を示し,最後まで家で過ごせるようにしたいとの回答があった.再開時では,介護負担感は介助を要すことが増えたため妻は外出しにくくなり,生活において介護にあてる時間が増加し,助けること(人的介助量)が増えたとの回答があった.介護肯定感評価尺度は45/56点と大きな変化はなかった.これらから,再開時も介護への継続意思は保たれているものの,介護負担感は増加していることから,まず介護負担感の軽減を目標に,ケアマネジャーと連携をとりADLの動作方法の再検討や手すり等支持物の導入を検討し,通所介護を半日型から1日型に変更した.
【結論】 訪問リハ利用者の主介護者に対して介護負担感だけでなく介護肯定感も評価することで,介護への継続意思や満足感など肯定的側面も捉えたうえで考察が可能となると考える.また,介護負担感と介護肯定感は状態変化などにより変化を伴う可能性があり,定期的に評価を行う必要があると考える.
【倫理的配慮、説明と同意】
本報告に際して,プライバシーおよび個人情報の保護には十分に配慮し,症例本人に対して口頭と書面による十分な説明と承諾を得ている.