第6回日本地域理学療法学会学術大会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション

[PN] パネルディスカッション

2019年12月14日(土) 16:30 〜 17:50 第1会場 (テルサホール)

地域包括ケア推進リーダー・介護予防推進リーダー実践活動
司会:関 恵美

[PN-03] 健康行動の変化を促す介護予防活動の効果検証
―地域在住高齢者における群間比較試験―

*篠原 智行1、齊田 高介1、田中 繁弥1、宮田 一弘2、山上 徹也3 (1. 高崎健康福祉大学、2. 茨城県立医療大学、3. 群馬大学大学院)

キーワード:地域在住高齢者、介護予防、健康行動

【はじめに】
近年の介護予防では、健康行動の変化を含めた多角的アプローチが注目されている。今回、健康行動の変化を目的に、地域在住高齢者が体力測定結果のフィードバックを受け、集団で課題分析を行い、活動内容を考える展開を実践した。その介入の有効性を、体力測定結果のフィードバックのみの群との比較にて検証した。
【方法】
対象は70歳以上の女性の地域在住高齢者であり、介入群22名、対照群15名とした。介入群は地域の通いの場に任意の頻度で参加、対照群は月1回の介護予防活動に参加していた。介入群では、事前測定を実施し結果のフィードバックを行い、その後1ヶ月間で、集団で課題分析し、活動内容を話し合いにて決定した(2週間に1回、理学療法士が参加して支援)。その後3ヶ月間、決めた活動を実施した(月に1回、理学療法士が活動内容の確認のため参加)。合計4ヶ月間の介入期間後に事後測定を実施した。その後に観察期間として6ヶ月を設け、観察期間後測定を実施した。一方、対照群では結果のフィードバックのみを行った。測定では疼痛の有無とVisual Analog Scale(VAS)の聴取、握力と大腿四頭筋筋力の測定、Brief-Balance Evaluation Systems Test(BESTest)、Rapid Dementia Screening Test(RDST)を実施した。事後と観察期間後では、前回の測定からの健康への意識変化をLikert scaleにて聴取した。解析は有意水準を5%として、事前、事後、観察期間後の各測定値の群間比較を行った。
【結果】
全測定を実施できた対象者は12名/11名(介入群/対照群)であり、完遂率は54.5/73.3%、平均年齢は79.6/78.1歳であった。介入群で膝関節と腰部の疼痛改善を目的とした運動を実施した。理学療法士が運動メニューを作成し、運動指導を行った。事前、事後、観察期間後の測定値の平均は、VASが28.8、47.0、28.4/40.3、38.3、43.6、握力が21.2、20.5、20.3/20.0、20.6、21.0kg、大腿四頭筋筋力体重比が0.36、0.36、0.37/0.36、0.42、0.46kgf/kgであった。疼痛有の割合は75.0、83.3、66.7/54.5、54.5、63.%であった。Brief-BESTestのセクションの各中央値は、Ⅰが1.0、3.0、3.0/1.0、2.0、2.0、Ⅱが2.0、2.0、2.5/2.0、2.0、2.0、Ⅲが3.0、6.0、5.0/3.0、3.0、3.0、Ⅳが3.0、4.0、4.0/4.0、5.0、4.0、Ⅴが1.5、3.0、3.0/2.0、3.0、3.0、Ⅵが3.0、3.0、2.5/3.0、3.0、3.0、RDSTの中央値は9.5、9.0、8.5/10.0、9.0、9.0点であった。健康への意識が増えた回答の割合は事後で25.0/54.5%、観察期間後で33.3/54.5%であった。観察期間後のBrief-BESTestのセクションⅠのみに有意差が認められた。
【結論】
集団で心身の課題分析から活動へ展開することで健康意識は増え、バランス能力のうちBrief-BESTestのセクションⅠ、即ち股関節外転力と体幹側屈力の改善をもたらした。一方、測定結果のフィードバックのみでも健康意識は増え、心身の機能維持ができた。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言を順守した。また、高崎健康福祉大学の研究倫理審査を受審した(第2936号)。対象者には事前に研究の趣旨を説明し、書面にて同意を得た。