第6回日本地域理学療法学会学術大会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション

[PN] パネルディスカッション

2019年12月14日(土) 16:30 〜 17:50 第1会場 (テルサホール)

地域包括ケア推進リーダー・介護予防推進リーダー実践活動
司会:関 恵美

[PN-04] 高齢者の介護予防を目的としたアクティブ・ラーニング型健康教育の地域実践と24週間の持続効果
~住民主体による取り組み~

*上村 一貴1、山田 実2、岡本 啓1 (1. 富山県立大学、2. 筑波大学)

キーワード:行動変容、身体活動、地域リハビリテーション

【はじめに・目的】
我々は高齢者を対象としたランダム化比較試験により、介護予防を目的としたアクティブ・ラーニング型健康教育によって生活習慣や身体機能に改善が得られたことを過去に報告した(上村・他.理学療法学2018)。アクティブ・ラーニングは、主体的な学びと他者との協働を促進する教育手法であり、本研究では地域での汎用化に向けてプログラムの改良を行った。具体的には、①学習内容を一冊にまとめた専用テキストの作成、②ファシリテーター(教室の進行役)としての地域住民の育成、の2点を達成し、専門家の常駐を必要としない、住民主体で実施可能な学習スタイルの実現を目指すものとした。本研究の目的は、アクティブ・ラーニング型健康教育を住民主体で実践し、身体機能や生活習慣(身体活動)が改善するか、さらに24週間後も維持可能かを検証することである。
【方法】
対象は地域在住高齢者25名(平均75.2歳、男性10名)とし、週1回90分、12週間の運動・栄養・知的活動をテーマとした教育介入を行った。各学習課題について『宿題→グループワークによる共有・発表→実践』を一連の流れとして、事前に作成したテキストに沿って学習を進め、健康行動を促進した。教室の司会進行は、ファシリテーターとして養成された高齢者が担当した。効果判定のアウトカムとして、歩行速度、5回椅子立ち座りテスト、Timed Up & Go test(TUG)により身体機能を評価した。身体活動は、歩数計(YAMASA, EX-500)を用いて14日間における平均歩数を調査した。各指標を介入前、12週間の介入終了後、さらにそれから24週の追跡期間後の3点において評価し、反復測定分散分析および多重比較(Holm法)を行った。
【結果】
22名(88%)が12週間の介入を完遂し、出席率は中央値91.7%(四分位範囲,83.3-91.7)であった。その後の追跡中に3名(2名:健康上の問題、1名:辞退)が脱落し、24週後評価に参加した19名(76%)が解析対象者(平均75.0歳、男性8名)となった。分散分析の結果、すべての指標に有意差を認めた(p<0.05)。多重比較の結果、介入前に比較して、歩行速度は介入後および24週間後に、5回椅子立ち座りテストは介入後にのみ、TUGは24週間後にのみ有意な改善がみられた(p<0.05)。歩数は介入後・24週間後に増加傾向を示したが、いずれも有意差を認めなかった(p=0.07)。
【結論】
住民主体によるアクティブ・ラーニング型教育介入により、介入終了から24週後の時点での歩行能力に改善効果が得られることが示された。本研究の限界として、対照群がないこと、脱落例の除外により効果を過大評価している可能性があることが考えられ、今後は適切なサンプルサイズに基づくランダム化比較試験を行う必要がある。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に則り、対象者に研究の目的や内容、個人情報の保護について口頭と書面にて十分に説明した上で同意を得た。富山県立大学・人を対象とする研究倫理審査部会の承認を受けて実施した(番号:第H30-12号)。