第6回日本地域理学療法学会学術大会

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シンポジウム

シンポジウム

[SY] シンポジウム

Sun. Dec 15, 2019 2:00 PM - 3:50 PM Room1 (Terrsa hall)

地域理学療法学のエビデンス
講師:松本大輔、岡前暁生、
   石垣智也
司会:池添冬芽

[SY-03] 訪問リハビリテーションのエビデンス

*石垣 智也1 (1. 名古屋学院大学 リハビリテーション学部 理学療法学科)

「訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)は個別性が強く効果に関するエビデンスを見出しにくい」との声を耳にすることがある.しかし,本当に訪問リハの効果にエビデンス,すなわち科学的根拠はないのであろうか.
知り得る限りにおいて,訪問リハの効果に関する最初のエビデンスは,1985年にイギリスのWadeらがThe Lancet誌へ報告した研究にまで遡る.これでは脳卒中患者を対象に,訪問リハを含む多職種チームで在宅ケアを行った効果を検証しており,従来の病院を中心としたケアに比べ,在宅ケアの有効性は認められなかったとされている.ここで重要なのは,諸外国では既に30年以上も前からエビデンスの構築が行われている点である.そして,効果の是非についても後に続く数多くの研究で検証が重ねられており,一部ではエビデンスレベルの高いシステマティックレビュー・メタアナリシスで有効性が論じられているものも存在する.すなわち,訪問リハの効果に関するエビデンスは存在するということである.
ただし,これらは保険制度や文化の異なる諸外国のエビデンスであり,本邦の訪問リハに限ったエビデンスは非常に限られている.このような背景から,本邦では訪問リハのエビデンスに対して消極的な認識になっているのかもしれない.しかし,諸外国のエビデンスであったとしても,本邦の訪問リハに有用となるエビデンスは数多く存在する.これらを適切に解釈することで,本邦の訪問リハの効果に資する情報として読み解くことができるのではないだろうか.
本シンポジウムでは訪問リハの効果に関するエビデンスを概説するとともに,本邦の訪問リハへの適用可能性や課題についても提言する.これにより,地域理学療法学のエビデンス構築に向けた展望と課題について議論を行いたい.