第74回日本東洋医学会学術総会

セッション情報

本部委員会プログラム

生薬原料委員会企画シンポジウム
(日本東洋医学会・日本生薬学会ジョイントシンポジウム)

今、もう一度「生薬」を知る

2024年6月2日(日) 14:40 〜 16:40 第10会場 (11F 会議室1101+1102)

座長: 川添 和義(昭和大学薬学部 臨床薬学講座 天然医薬治療学部門), 有田 龍太郎(東北大学病院 総合地域医療教育支援部・漢方内科)

 今回、生薬原料委員会では日本生薬学会に所属されている先生方とジョイントで『今、もう一度「生薬」を知る』というテーマのシンポジウムを企画しました。生薬は漢方薬を構成する薬であると同時に、漢方薬の働きをつくりだす「素」でもあ
り、漢方治療を行う上で非常に重要であることは疑いようもありません。しかし、この生薬について、我々はどこまで知っているのか、今一度、振り返ってみる必要があるのではないでしょうか。例えば、当帰芍薬散という処方の使い方は多くの漢方医が当然のように知っていて、治療に利用しているところですが、その構成生薬である当帰や沢瀉などについてどこまで理解されているでしょうか。基原植物がどのように栽培され、どのように加工されて流通しているかご存じでしょうか。どのような基礎的な研究がなされていて、どこまで科学的にわかっているかご存じでしょうか。
 生薬の多くは農産品加工物であり、生産者がいて流通があり、加工を施されそして各処方に配合されていきます。その流れを知ることは最終的な産品を利用する漢方医にとって、その「本質」を知る意味でも重要だと考えます。さらに、生薬の科学的側面を理解することは、処方の科学的意義を理解する上でとても大切なことだと考えます。
 そこで、このシンポジウムでは漢方処方に最も多く配合される甘草を例として取り上げ、甘草の栽培・流通・基礎的研究について、専門にされている日本生薬学会の研究者、ならびに生薬メーカーの方にその実情や問題点を示していただきます。さらに、臨床医と薬剤師からは、利用する側の立場から甘草について、様々な問題点などを示していただこうと考えています。このシンポジウムでは、このように異なる立場から一つの生薬を立体的に眺めることにより、その生薬の様々な面が見えてくることを実感していただくのが一つの大きな目的です。さらに、各立場から問題点を出し合い、互いに気づかなかった側面のあることを知っていただくのも目的としています。
 今回のシンポジウムでは甘草をモチーフとしましたが、これ以外の生薬についても同様の観点で見ていただき、新しい発見につながれば、企画した立場として大変うれしく思います。日本東洋医学会と日本生薬学会との共通言語は「生薬」です。今回の生薬原料シンポジウムでは、この「言語」のことを今一度知っていただき、漢方薬における生薬の意義をあらためて考えていただく機会になれば幸いです。

 1.生薬・甘草と麦門冬の国内生産への試み
    芝野 真喜雄(大阪医科薬科大学薬学部臨床漢方薬学研究室)
 2.生薬の流通について
    栃本 久美子(株式会社栃本天海堂)
 3.基礎研究
    森永 紀(第一薬科大学薬学部漢方薬学科 和漢薬物学分野)
 4.偽アルドステロン症発症のリスク因子
    吉野 鉄大(慶応義塾大学医学部漢方医学センター(全人的漢方診断共同研究講座))
 5.臨床(薬学)
    細野 靖之(細野漢方薬局)