4:30 PM - 5:30 PM
[BL-2] CT画像評価の基礎 -すぐに役立つ実験の手法と解析-
本セミナーでは,CT領域における基礎実験の手法やデータ解析方法について解説する.研究や実験をやってみたいが,「施設にファントムや計測機材がない」「身近に詳しい人がいないのでやり方がわからない」と考えてしまい,一歩を踏み出せない方々も多いのではないだろうか.しかし,基礎的な実験では特別なファントムや計測機材を必要としないものも多く,実際には容易に実験することができる.本項では,CT領域における基礎実験による物理的な画質評価指標のうち,以下の5項目について,評価法の概要から使用するファントムの作成方法,画像取得方法(撮影条件等),データ解析方法などを解説する.
MTF (modulation transfer function)
スライス面内の解像特性(空間分解能)の評価には,変調度伝達関数(MTF)が多く用いられている.MTFは空間周波数に対する応答を示す関数で,限界の解像周波数だけでなく,各周波数帯における応答も定量的に把握できるため,空間分解能の評価に有効である.本項では金属ワイヤを使用した手法1,2)について解説する.
SD (standard deviation)
CT画像における画像ノイズはX線量子数のゆらぎによる統計的な変動である.X線量子のゆらぎはポアソン分布に従うとされており,その標準偏差(SD)は量子数の平方根となることが知られている.そのためCT画像のノイズ特性を把握するための簡易的な手法としてCT値のSD計測3)が広く用いられてきた.本項では,水ファントムを用いたSD計測による評価方法について解説する.
NPS (noise power spectrum)
空間周波数ごとのノイズレベルを測定する方法がNPS法4)である.NPS法では,前述したSD法では得られなかったノイズの空間周波数成分の解析が可能となる.本項では,水ファントムを用いたNPS法について解説する.
SSP (section sensitivity profile)
マルチスライスCTの登場により,高精細なボリュームデータの取得が可能となったことで,日常的に三次元データが使用されるようになった.したがって,前述したスライス面内(XY面)だけでなく,体軸方向(Z軸方向)についても評価する必要がある.本項では,自作ビーズファントムを用いて計測したスライス感度プロファイル(SSP)から得られる実効スライス厚の評価方法5)について解説する.
TSP (temporal sensitivity profile)
CT画像は被写体のまわりを回転しながら投影した複数のデータから再構成される.したがって,CT画像はある時間の範囲で収集されたデータからなるため時間分解能は収集時間に依存する.またCT装置で一般に用いられているヘリカル撮影は,様々な再構成法が採用されていることで時間の重み付けが複雑となり,ノンヘリカル(コンベンショナル)撮影のように単純な時間分解能指標が適用できなくなった.CTでは,動きに対して画像のボケだけでなくアーチファクトが発生するため時間分解能の影響は顕著である.したがって,装置やプロトコルごとの時間分解能を把握することは重要である.本項ではCTにおける時間分解能の定義と金属球を使用したインパルス法6,7)について解説する.
参考文献
1.Bischof CJ, Ehrhardt JC. Modulation transfer function of the EMI CT head scanner. Med Phys. 1977; 4(2): 163-167.
2.市川勝弘,原 孝則,丹羽伸次,他.CTにおける金属ワイヤによるMTFの測定法.日放技学誌.2008; 64(6): 672-679.
3.竹中栄一,飯沼 武,遠藤真広,他.X線コンピュータ断層撮影装置の性能評価に関する基準(第二次勧告).日本医師会誌. 1979; 82: 1175-1185.
4.Boedeker KL, McNitt-Gray MF. Application of the noise power spectrum in modern diagnostic MDCT: part II. Noise power spectra and signal to noise. Phys Med Biol. 2007; 52(14): 4047-4061.
5.Davros WJ, Herts BR, Walmsley JJ, et al. Determination of spiral CT slice sensitivity profiles using a point response phantom. J Comput Assist Tomogr. 1995; 19(5): 838-843.
6.市川勝弘,高田忠徳,原 孝則,他.CTにおける時間分解能の新しい測定法.日放技学誌. 2008; 64 (9): 1172-1176.
7.Ichikawa K, Hara T, Urikura A, et al. Assessment of temporal resolution of multi-detector row computed tomography in helical acquisition mode using the impulse method. Phys Med. 2015; 31 (4): 374-381.
MTF (modulation transfer function)
スライス面内の解像特性(空間分解能)の評価には,変調度伝達関数(MTF)が多く用いられている.MTFは空間周波数に対する応答を示す関数で,限界の解像周波数だけでなく,各周波数帯における応答も定量的に把握できるため,空間分解能の評価に有効である.本項では金属ワイヤを使用した手法1,2)について解説する.
SD (standard deviation)
CT画像における画像ノイズはX線量子数のゆらぎによる統計的な変動である.X線量子のゆらぎはポアソン分布に従うとされており,その標準偏差(SD)は量子数の平方根となることが知られている.そのためCT画像のノイズ特性を把握するための簡易的な手法としてCT値のSD計測3)が広く用いられてきた.本項では,水ファントムを用いたSD計測による評価方法について解説する.
NPS (noise power spectrum)
空間周波数ごとのノイズレベルを測定する方法がNPS法4)である.NPS法では,前述したSD法では得られなかったノイズの空間周波数成分の解析が可能となる.本項では,水ファントムを用いたNPS法について解説する.
SSP (section sensitivity profile)
マルチスライスCTの登場により,高精細なボリュームデータの取得が可能となったことで,日常的に三次元データが使用されるようになった.したがって,前述したスライス面内(XY面)だけでなく,体軸方向(Z軸方向)についても評価する必要がある.本項では,自作ビーズファントムを用いて計測したスライス感度プロファイル(SSP)から得られる実効スライス厚の評価方法5)について解説する.
TSP (temporal sensitivity profile)
CT画像は被写体のまわりを回転しながら投影した複数のデータから再構成される.したがって,CT画像はある時間の範囲で収集されたデータからなるため時間分解能は収集時間に依存する.またCT装置で一般に用いられているヘリカル撮影は,様々な再構成法が採用されていることで時間の重み付けが複雑となり,ノンヘリカル(コンベンショナル)撮影のように単純な時間分解能指標が適用できなくなった.CTでは,動きに対して画像のボケだけでなくアーチファクトが発生するため時間分解能の影響は顕著である.したがって,装置やプロトコルごとの時間分解能を把握することは重要である.本項ではCTにおける時間分解能の定義と金属球を使用したインパルス法6,7)について解説する.
参考文献
1.Bischof CJ, Ehrhardt JC. Modulation transfer function of the EMI CT head scanner. Med Phys. 1977; 4(2): 163-167.
2.市川勝弘,原 孝則,丹羽伸次,他.CTにおける金属ワイヤによるMTFの測定法.日放技学誌.2008; 64(6): 672-679.
3.竹中栄一,飯沼 武,遠藤真広,他.X線コンピュータ断層撮影装置の性能評価に関する基準(第二次勧告).日本医師会誌. 1979; 82: 1175-1185.
4.Boedeker KL, McNitt-Gray MF. Application of the noise power spectrum in modern diagnostic MDCT: part II. Noise power spectra and signal to noise. Phys Med Biol. 2007; 52(14): 4047-4061.
5.Davros WJ, Herts BR, Walmsley JJ, et al. Determination of spiral CT slice sensitivity profiles using a point response phantom. J Comput Assist Tomogr. 1995; 19(5): 838-843.
6.市川勝弘,高田忠徳,原 孝則,他.CTにおける時間分解能の新しい測定法.日放技学誌. 2008; 64 (9): 1172-1176.
7.Ichikawa K, Hara T, Urikura A, et al. Assessment of temporal resolution of multi-detector row computed tomography in helical acquisition mode using the impulse method. Phys Med. 2015; 31 (4): 374-381.