The 27th Kinki Association for Clinical Engineers

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一般演題

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血液浄化①

座長:重松 武史(宮本クリニック 臨床工学科)、松本 真季(日本赤十字社 和歌山医療センター 臨床工学技術課)

[03-02] 電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)による新しい血液濾過膜の細孔構造解析

*福田 誠1、田中 涼1、大森 結友1、竿本 仁志2、森 智博2 (1. 近畿大学 生物理工学部 医用工学科、2. 和歌山県工業技術センター)

【背景・目的】

持続緩徐式血液濾過(CRRT)を施行する際は、白血球や血小板への刺激により中空糸内面への蛋白質の付着(ファウリング)がおこり、血液濾過が滞るようなリスクもある。従って血液濾過膜には高い生体適合性が要求される。本邦におけるCRRTでは、ポリスルホン膜の血液濾過器が最も多く使用されている。したがってICU入室患者において異なるポリスルホン膜血液濾過器でCRRTを検証し、あわせて治療中のファウリング現象を直接顕微鏡観察によって解析することで、血液濾過器の至適な選択、設計が可能となる。

本研究では、先行研究[1]と同様の手法を用いて、新規血液濾過膜の血液接触前の細孔構造を解析することを目的とする。



【方法】

異なる特性を有する3種類のポリスルホン膜、ヘモフィール®SNV-1.0、SHG-1.0(東レ(株))およびEXCELFLO®AEF-1.0(旭化成メディカル(株))を対象とした。走査型プローブ顕微鏡 (SPM)およびFE-SEMを 用いて、中空糸膜内表面、外表面および横断面の構造を観察した。これまで以上に詳細な細孔構造解析を試みるため、中空糸膜の横断面の切断方法、液体窒素中での凍結割断、真空乾燥条件なども検証した。



【結果・考察】

 3種類のポリスルホン膜ともに、FE-SEMでは膜内表面が緻密であり、膜外表面がポーラスである細孔構造を有していた。FE-SEMでは原理上は2次元画像を観察できるが、膜外表面では奥まった3次元迷宮細孔構造を確認することができた。膜外表面の細孔直径(長軸)は、SNV354±156nm、SHG535±251nm、AEF680±289nm(いずれも孔数n=30 or 50、観察サンプル数n=3)、 膜内表面の膜面開孔率は、SNV4.6±0.1%、SHG2.4±2.1%、AEF7.5±1.0%であった。それぞれ独特の細孔構造を有しており、膜内表面へのファウリング現象の特性も異なることが推察された。



【結言】

3種類のポリスルホン膜はそれぞれ独特の細孔構造を有しており、膜内表面へのファウリング現象も異なることが推察された。



[1] Fukuda, M.; et al. Validity of three-dimensional tortuous pore structure and fouling of hemoconcentration capillary membrane using the tortuous pore diffusion model and scanning probe microscopy. Membranes 2020, 10, 315.