The 27th Kinki Association for Clinical Engineers

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シンポジウム5

Sun. Sep 26, 2021 9:15 AM - 10:15 AM No.1 site (ZOOM)

座長:前川 正樹(おもと会大浜第一病院 診療技術部 臨床工学科)、松本 景史(JCHO大阪病院 臨床工学室)

9:15 AM - 10:15 AM

[SY5-1] アブレーション治療において医師が臨床工学技士に求めたいこと

*井上 耕一1 (1. 大阪医療センター 循環器内科)

社会の高齢化により、不整脈患者、特に心房細動患者は急激に増えている。頻脈性不整脈に対する治療であるカテーテルアブレーションの症例数も著しく増加し、本邦では過去5年間で倍になり、年間10万例以上行われている。
 アブレーション治療では、電気生理学の専門的な知識と経験、様々な新しい知見や使用する三次元マッピングシステム等の医療機器の高度化などに伴う情報のアップデートが常に必要とされる。この治療では、心内心電図測定装置や三次元マッピングシステムの操作、電位の解釈とストラテジーの組み立て、カテーテル操作と患者管理などで特に高い専門性がある。カテーテル操作以外の部分では臨床工学技士の知識と経験に頼ることが多く、その力量が治療の成否を大きく左右する。ここのスキルとそれを得るための努力、そして自分が治療に携わる主役の一人であることの自覚(当事者意識)と覚悟(責任感)は、アブレーション治療時に医師が臨床工学技士に求めることの根幹である。
 しかし、これからはより広い視野をもって業務にあたる必要がある。近年、医師の長時間労働が問題に上げられるようになり、その是正のために「医師の働き方改革」が進められている。長時間労働の解決策の一つとしてタスクシフティング(業務の移管)とタスクシェアリング(業務の共同化)があげられる。アブレーション治療においても臨床工学技士へのタスクシフト・シェアが求められる。シフト・シェアされる業務範囲は、「医師(看護師)でなくては行えないものを除いたすべての業務」が究極的な目標である。さらにシフトとシェアを越えて、カテ室のスケジュールを管理したり、使用物品を管理したり、多職種連携のハブとなったりして、「働きやすい機能的なカテ室」の中心に臨床工学技士がいることが理想である。これらの事を実現するためには、カテ室業務に知悉しなくてはならない。各施設の臨床工学科管理者と病院経営陣には、カテーテル室に専任して「専門性」と「業務への理解とコミットメント」が高められる体制を求めたい。
 そして、能力のある臨床工学技士には、病院を飛び越えた活躍を期待したい。臨床工学会や日本不整脈心電学会等での発表や運営、英文論文の執筆などで医師以上の活躍をしているスター達がいる。彼らの見識と経験は、この治療のレベルアップやカテ室や不整脈業界の良い雰囲気の醸成に必要不可欠である。是非、病院の中にとどまらない広い視野を持って「日本の不整脈治療のレベルを上げるぞ!」という心意気で研鑽を積んでいってほしい。