The 27th Kinki Association for Clinical Engineers

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特別講演

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特別講演3

Sun. Sep 26, 2021 1:10 PM - 2:10 PM No.1 site (ZOOM)

座長:小北 克也(仁真会白鷺病院 臨床工学科)

1:10 PM - 2:10 PM

[特別講演3] 臨床工学技士が知っておくべき新型コロナウイルス感染症に対する知識
〜今日までの取り組みと今後の展望〜

*森井 大一1 (1. 日本医師会総合政策研究機構)

コロナ問題の本質は、コロナによってもたらさられる「非日常」を、誰が、どこで引き受けるかである。非日常は、感染症の「予防」と「治療」の2つの局面で生じる。まず予防について、コロナの感染経路は主として飛沫感染である。飛沫とは、発語や咳やくしゃみによって最大2メートル飛ぶ唾液等のしぶきのことである(しぶきが降り注いだ手すりやカーテンに触れた手で鼻や口を触れば接触感染することもあるので、飛沫感染するものは大概接触感染もする)。空気感染(飛沫核感染)とは違い、飛沫は口から発せられると数秒で落下する。マスクを適切につければ飛沫はほとんど遮断される。2メートルの距離で飛沫が飛ぶような行為、すなわち大声でおしゃべりしたり歌ったりすることは、感染の危険をもたらす。相手がウイルス排泄している状態なら、ほぼ確実にウイルスへの曝露が起こる。これをハザードという。対して、人とすれ違ったり、距離を取って静かに言葉を交わすような行為の危険は相対的に小さい。小さいけれども、ステイホームで誰にも会わないよりは大きい。これをリスクという。感染対策には、ハザードの管理とリスクの管理がある。ハザードの管理は、半径2メートルのマネジメントなので、個人個人の責任でやるしかない。リスクの管理は、基本的に人流抑制なので、行政が音頭をとるしかない。危険の管理を議論する時には、まず管理しようとしているの危険の中身がハザードなのかリスクなのかを分けて考える必要がある。一般にリスクの管理は、無駄が多く非効率であり、多くの人に非日常を強いてしまう。ハザードの管理でどうしても感染がコントロールできない時にはリスク管理の出番がある。コロナが感染すると普通の風邪よりも圧倒的に高い頻度で重症化して医療が必要になる。感染がコントロールできなければ、患者数が増大し医療を圧迫する。2021年2月の特措法改正では、緊急事態宣言の要件として「医療提供の支障」が盛り込まれた。医療はそもそも社会の姿が「今日が昨日と同じように、明日が今日と同じ」であるために存在している。人の人生は、急に病気になったり事故にあったり、非日常と隣り合わせだ。それでも、医療という非日常の引き受け手があればこそ、社会は粛々と回っていられる。もしコロナが、社会から駆逐できないものなら、我々はこの感染症がもたらす非日常を日常のシステムの中に内在化して処理する術を持たなければならない。そうでなければ、常に医療ひっ迫という名の患者の押し付け合いと、それを緩和するための人流抑制が必要になる。これは緊急事態の常態化であり、非日常が日常化することである。どちらを選ぶべきか、論を待たない。