第27回近畿臨床工学会

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シンポジウム7

2021年9月26日(日) 09:30 〜 11:00 第2会場 (ZOOM)

座長:岡田 未奈(社会福祉法人恩賜財団 済生会西条病院 医療機器管理室)、定 亮志(大阪市立大学医学部附属病院)

09:30 〜 09:40

[SY7-1] 起業への挑戦~CEが作る医療機器の可能性~

*木戸 悠人1 (1. 株式会社iDevice, 大阪府結核予防会 大阪複十字病院)

【概要】
 私は2020年4月より株式会社iDeviceの代表取締役としてNPPVマスクの開発を行っている。医工連携によるプロジェクトは様々あるが、起業による医療機器開発について紹介する。
 NPPV(非侵襲的陽圧換気)は挿管と比較して低侵襲になっているが、 MDRPU(医療関連機器圧迫創傷)という新たな問題が生じており非侵襲とは言い難いのが現状である。また、マスクリークやMDRPUを予防するために様々な処置や観察が増えており、医療者の負担も増えている。
 簡単にリークがなく装着でき、MDRPUも予防できるマスクについて考察するようになり、基本的な構造を着想したことから製品化へ向けて活動を始めた。
 まずは医療機器メーカーやものづくり企業に製造していただく方法を模索したが、NPPVマスクを製造している国内企業がほぼ無いことから困難であった。そのような状況の中、大阪府臨床工学技士会のセミナーを通じて起業家と出会い、協力を得られることになったことから起業して製品化を目指すことを決断した。
 ビジネスを行うことは主に金銭的なリスクを伴うが、資金調達の手段も充実してきている。無担保の融資の他、株式による資金調達もヘルスケアビジネスに出資する投資家も増えている。更には、副業環境が整っていないことから、臨床家としてのキャリアとも折り合いをつけなければならない可能性が高い。
 一方でこのようなデメリットは起業することのメリットでもある。これまでの医工連携ではリスクはほぼ全てものづくり企業が負うことになっている。そのため、ものづくり企業は連携に踏み切るには大きな覚悟が必要となるが、リスクを引き受けることによって連携先は見つかりやすくなる。また、リスクを負う企業の決定権が強く、ものづくり側の都合で開発が進むことがあるが、起業することによって自分の意見(医療者のニーズ)を反映させやすくもなる。
そして、自ら事業にコミットできることも大きなメリットである。病院職員としての立場では事業に関わることに制限が生じることもあるが、起業することによって100%事業に関わることが可能となる。
以上から全てのプロジェクトで起業が望ましいわけではないが、起業も一つの手段である。医療ニーズを把握しており、顧客(医療機関)と繋がりがある臨床工学技士の起業は社会的な意義も大きいと考えている。