第27回近畿臨床工学会

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シンポジウム7

2021年9月26日(日) 09:30 〜 11:00 第2会場 (ZOOM)

座長:岡田 未奈(社会福祉法人恩賜財団 済生会西条病院 医療機器管理室)、定 亮志(大阪市立大学医学部附属病院)

09:50 〜 10:00

[SY7-3] フリーランス臨床工学技士の挑戦〜現実と将来〜

*大石 杏衣1 (1. Kiwi)

【背景】
医療機器がなくては診断も治療もできず、病院の大小に限らず生命維持管理装置は使用されている。しかし、臨床工学技士(以下,CE)の正規雇用は大病院や透析業務のある病院、クリニックがほとんどである。一方で、中小規模病院では、呼吸器や手術室を備えていても、医療機器(以下、機器)の種類や台数が少なく、人件費の捻出が難しい等の理由でCEを正規雇用する施設は少ない。
【独立のきっかけ】
私が勤めた118床の療養型病院では、人工呼吸器が平均15台稼働していたが、看護師はブランクが長く離職率が高かった。呼吸器以外の機器に対しても知識と認識が低く、不適切な使用や間違ったトラブル対応によるインシデントも多かった。機器が正しく管理・使用されないだけで医療の質そのものが低下しているような強い危機感さえ感じた。その経験から、中小規模病院こそCEによる機器管理や教育が必要であると強く感じ、2019年8月に個人事業主として独立し、CE不在の病院で医療機器の管理・運用・教育のサポートをする医療機器安全管理支援(以下,支援)を始めた。
【現在と将来】
CE不在病院の多くは、医療機器管理台帳(以下,台帳)や定期点検計画表策定と実施が不十分である。支援では、それらの整備から開始する。その後は月数回の訪問で、機器点検やマニュアル整備、医療機器に関連するインシデント対策や教育等を行っている。定期訪問であっても、看護師等の医療スタッフで無理なく正しい医療機器管理が行える体勢を整え、教育することは、患者の安全だけでなく、医療スタッフの安心につながっている。
【現在と将来】
機器管理は最低限の医療の質の担保であり、医療安全にも繋がる。しかし、機器に無関心な医療機関では新規開拓が難しいという現状もある。機器管理の重要性や経済的メリット、医療安全の面で客観的にCEの重要性を示すことも重要である。
さらに、私自身、キャリアを失った立場であるが、看護師と比較するとCEは雇用形態が限られる上、早番、遅番、オンコールがある病院も多い。今後Kiwiの業務を拡大するに際し、女性技士や定年退職をされたCEの新たな雇用の場も目指したい。
今後、医療は大きく変化すると考える。しかし、医療機器は減ることはない。在宅を含めた全ての医療機関で医療機器の正しい管理・運用・教育ができる体制を目指し、今後も進んでいきたい。