The 27th Kinki Association for Clinical Engineers

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一般演題

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血液浄化③

[15-01] 血液透析回路凝固にビタミンE固定化透析膜が有効であった1例

*粟野 真依1、梶原 聡司1、小西 康司1、米田 龍生2 (1. 奈良県立医科大学附属病院 医療技術センター、2. 奈良県立医科大学附属病院 透析部)

【緒言】
 出血傾向のある生体は凝固系が亢進し,血液透析(HD)回路凝固を起こす可能性がある.その発生要因の1つとして透析膜の影響が考えられる.旭化成社製のビタミンE固定化ポリスルホン膜(VPS-HA)は,抗酸化・抗炎症作用・抗血栓性に優れた透析膜としての報告が散見される.今回,透析膜をVPS-HAに変更し,回路凝固が改善した症例を経験したので報告する.
【症例】
 50歳代男性,原疾患IgA腎症,透析歴5年5ヶ月.肝硬変から肝細胞癌(HCC)を生じ,部分切除術後,再発に対してIVR治療が繰り返され,以降肝不全,上部消化管・腹腔内出血などで入退院を繰り返していた.今回,特発性細菌性腹膜炎疑いにて入院となった.
【経過】
 前回の入院透析で凝血傾向のため,抗凝固薬のメシル酸ナファモスタット(NM)を30mg/hから40mg/hに増量し,今回もNM40mg/hでHDを施行した.HD中,出血傾向のため赤血球,血漿製剤を投与していた.回路凝固による回路交換が頻回なため透析膜をAPS-15SAからVPS-18HAに変更した結果,透析中の回路凝固や返血後の回路の残血が改善し,回路交換を要さなくなった.
【考察】
 ビタミンEは,抗酸化作用により活性酸素による血小板の活性を抑制することで抗血栓性を発揮すると考えられており,ビタミンE固定化膜により低分子ヘパリンの減量や無ヘパリン透析が可能となったという報告もある.
さらに,ビタミンE固定化膜以外にも生体適合性を向上させた合成高分子膜で抗血栓性が示されており,回路凝固を呈する患者に対しては,膜変更も考慮すべきと思われる.
【結語】
 難治性のHD回路凝固に対してビタミンE固定化膜への変更は回路凝固改善のための対応の一手となり得ると考えられる.