The 28th Kinki Association for Clinical Engineers

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パネルディスカッション

パネルディスカッション1
排痰補助装置の効果的な臨床使用と今後の展望

Sun. Oct 9, 2022 9:00 AM - 10:30 AM 第2会場 (Zoom)

座長:大野 進(滋賀県立総合病院)

[PD1-4] COVID-19に感染した在宅TPPV療法を受ける重症心身障害児の呼吸管理と排痰ケア

*上田 博臣1 (1. 滋賀県立小児保健医療センター 慢性呼吸器疾患看護認定看護師)

 重症心身障害児は、体温調節が難しい症例が多く低体温になりやすく不適切な加温加湿により分泌物が固くなりやすい。そのため、人工鼻回路では気道分泌物による閉塞のリスクがある。また、カフなしカニューレを使用しているケースが多く呼気に含まれた水分が奪われやすく分泌物が固くなりやすい。そして、1回換気量が少ない小児は死腔量の増加に伴い、呼吸器の換気設定を調節する必要がある。このことから、小児では人工鼻回路ではなく加温加湿器を用いた呼吸管理が選択されている。
 新型コロナウイルス感染症の感染対策を考慮した人工呼吸管理では、人工鼻回路と閉鎖式吸引システムを使用し、カフありカニューレに変更すると共にエアロゾル発生リスクの高いケアは極力行わないとされている。
 COVID-19に感染した在宅TPPV療法を受ける重症心身障害児の呼吸管理において感染対策が求められた。はじめにカフありカニューレへ変更し、自動カフ圧計を使用し気管切開孔からのエアロゾルの暴露予防に努めた。そして、加温加湿器を用いた呼吸管理では、結露による感染のリスクが危惧されたので、F&P社製のEvaquaTM2回路を用いて呼吸器回路内の結露を抑制した呼吸管理を行なった。また、呼吸器の空気の取り込み口や吸気・呼気回路にもHEPAフィルターを装着しエアロゾルからの暴露を防いだ。
 重症心身障害児の多くは、気道分泌物の貯留により呼吸状態が悪化しやすい。そのため、高頻度胸壁振動法と機械的咳介助機器の2つの機能を持ち合わせたカフベンテック社製のコンフォートカフⅡを用いて排痰ケアを行った。
 機械的咳介助機器を用いた排痰ケアをするには、機械的咳介助機器の回路を接続するために、呼吸器回路の脱装着が必要となる。その結果、スタッフは排痰ケアを実施することでエアロゾルを暴露するのではと不安を訴えた。そのため、排気ユニットと可搬型陰圧クリーンドームを導入することで、エアロゾルから身を守り安全に排痰ケアができた。
 MR850加温加湿器とEvaquaTM2回路を用いた呼吸管理により、最適な加湿状態により気道クリアランスが維持でき排痰ケアが実施できた。また、在宅で使い慣れた呼吸器や加温加湿器を継続使用によりケアするスタッフの不安はなかった。そして、感染防止のための排気ユニットと可搬型陰圧クリーンドームにより、感染のリスクを減らし安心して排痰ケアすることができた。
 今回、COVID-19に感染した在宅TPPV療法を受ける重症心身障害児である6症例全ての患者が吸状態の悪化認めず退院することができたので報告する。