鉱物処理（1）

[PY-23] ChalcopyriteバイオリーチングにおけるNaCl添加による電位制御効果および銅浸出挙動の評価

○野口 晴生¹、小山 恵史¹、沖部 奈緒子¹ (1. 九州大学)

キーワード：Sodium chloride、Chalcopyrite、Bioleaching、Solution redox potential

一次硫化銅鉱物chalcopyriteは難処理性ではあるが、その豊富さにより将来的な銅資源として期待されている。本研究では、世界的な地下水塩水化問題とそれに伴う鉱業用水確保問題を背景に、NaClがchalcopyriteのbioleachingに及ぼす影響を評価した。低電位条件下(600 mV程度)ではchalcopyriteがより酸化されやすい中間体 chalcocite (Cu₂S) を経由することで銅浸出が促進されることが報告がされている。中度好熱性の鉄酸化細菌・古細菌（Am. ferrooxidans ICP・Acidiplasma Fv-A・Sb. sibiricus N1）および硫黄酸化細菌（At. caldus KU）から成るmixed cultures にNaCl を0.5-0.7% 添加することにより、細胞の鉄酸化能を意図的に抑制し、電位を暫くの間600 mV程度に維持することで銅回収率が向上した。一方、NaCl 0.8%以上では細胞増殖が阻害されたため電位は初期560 mVよりほぼ上昇せず、化学的chloride leaching反応のみでchalcopyriteは溶解、pH上昇に伴うFe沈殿とともに銅浸出が停止した。これらの結果より、NaCl存在下で持続的かつ最大限に銅浸出を促進するためには、電位を一定値にまで上昇させるための微生物学的鉄酸化活性・それ以上の電位上昇を抑制するためのCl^-による細胞不活性化効果・またpH維持のための微生物学的硫黄酸化活性などがバランスよく働く必要があると考えられる。今回はNaClの添加量およびタイミングについて各種条件検討することで、銅浸出の向上を目指した。