湿式素材プロセッシング・新材料（3）

[3112-17-02] 銅電解アノードスライムの湿式塩化処理における金の浸出挙動

○石井 俊匡¹、三宅 正男¹、池之上 卓己¹、平藤 哲司¹ (1. 京都大学)

司会:関本 英弘(岩手大学)

キーワード：銅電解アノードスライム、塩化浸出、過酸化水素、金、セレン

銅電解アノードスライムに対する塩酸と過酸化水素を用いた塩化浸出において、過酸化水素は高価であるため、その使用量の削減が課題となっている。従来の浸出条件では、スライム中の Au だけでなく Se も過酸化水素と反応し浸出されるため、Au だけの浸出に必要な計算量の数十倍以上の量の過酸化水素を使用する必要があった。当研究室では、熱力学計算から、高濃度の塩酸を用いれば、Se の浸出を防ぎ、Au を選択的に浸出できる可能性を見出した。そして、濃度 12 M の塩酸を用いた実験により、Au の選択浸出の検証を行い、過酸化水素使用量を大幅に削減できることを示した。しかし、高濃度の塩酸の使用は装置の腐食につながるため、より低濃度の塩酸を用いて過酸化水素使用量の削減を実現することが望ましい。そこで、本研究では、濃度 8 M の塩酸を用いてスライムの浸出実験を行い Au の選択浸出の可能性を調べた。過酸化水素を一度に添加する一括添加方法では、Se の溶解を防ぎながら Au を選択的に 60% まで浸出させることが可能であった。過酸化水素を複数回に分けて添加する分割添加方法では、Se の溶解を防ぎながら Au を選択的に 80% 近くまで浸出させることが可能であった。