第50回内藤コンファレンス

開催趣旨

グリア細胞が先導する脳機能 

Glia World – Glial Cells Governing Brain Functions 

 

第50回内藤コンファレンス 組織委員長
 岡部 繁男
 

 東京大学大学院医学系研究科 教授

 

 グリア細胞は、脳機能制御において神経細胞への栄養供給などの補佐的な役割しか持たないとこれまで考えられてきた。しかし最近の研究によりこのような古典的な考え方では説明できないグリア細胞の新しい機能が次々と発見され、グリア細胞はむしろ神経細胞や神経回路の機能を主体的に制御するという考えが神経科学においては主流となりつつある。脳の部位や発達に伴うグリア細胞機能の多様性についても、single cell RNA sequenceなどの革新的技術を活用した新しい発見が相次いでいる。またグリア細胞がアルツハイマー型認知症・筋萎縮性側索硬化症(ALS) などの神経変性疾患や統合失調症・うつ病などの精神疾患の病態にも関与することが明らかになりつつあり、グリア細胞の機能制御を基盤として精神・神経疾患の克服に向けた新しい戦略を提案することも開始されている。更に全身の臓器と脳の間での情報のやり取りを仲介し、臓器相関を制御する、というグリア細胞の機能にも注目が集まっている。2010 年に「グリアワールドから見た脳」と言うテーマを掲げて内藤コンファレンスが一度実施されているが、その当時は個体において脳と末梢臓器の相互作用をグリア機能という観点から捉える研究は技術的に不可能であった。10 年後の今日では、個体レベルでのグリア細胞の可視化や機能制御を可能とする新技術を活用した研究が加速度的に進展しつつある。今回の内藤コンファレンスでは、現在のグリア研究の最前線で活躍する研究者を国外・国内から集め、更に公募により参加する若手研究者によるポスター発表も実施することで、世代と国境を超えたグリア研究者による活発な交流を実現したい。このコンファレンスを契機として、関連する研究者の国際的なネットワークの構築や全く新しい着想に基づく共同研究などが生まれることを期待している。