第13回奈良県作業療法学会

学会長挨拶

領域を超えて学び合い、ともに高め合いましょう
そして、初のオンライン学会へのお力添えをお願い致します 


第13回奈良県作業療法学会

学会長 嶋谷 和之

奈良県総合リハビリテーションセンター


 2018年に日本作業療法士協会の作業療法の定義が改定されました。その定義の注釈において「作業療法は『人は作業を通して健康や幸福になる』という基本理念と学術的根拠に基づいて行われる」とし、学術的根拠の重要性が明記されました。作業の効用は日々の臨床の中で実感しますが、作業療法の学術的基盤をさらに高めるとともに、作業療法実践の効果の蓄積と検証がより必要になりました。
 また、作業療法の定義の注釈において、作業に焦点を当てた実践には「心身機能の回復、維持、あるいは低下を予防する手段としての作業の利用」と「その作業自体を練習し、できるようにしていくという目的としての作業の利用」、および「これらを達成するための環境への働きかけが含まれる」と明示されました。作業療法の手段として作業を用いるということは言うまでもありませんが、作業療法士自身の活用も重要であると思います。人がともに何かをするとき、さまざまな相互作用が生まれます。それはひとがひとを応援する作業療法の実践においても同様であり、作業療法士とクライエントのダイナミックな相互作用が存在します。なかなか分析しにくい作業療法ならではの作業療法士自身を活用した臨床的な「わざ」を科学的に捉えることも重要であると思います。
  奈良県では「奈良新『都』づくり戦略2021」が公表され、「県民が安心して快適に暮らし続けられる奈良をつくる」「健康寿命日本一を目標に、高齢者、障害者を含む、誰もが健やかに暮らせる地域をつくる」などの施策が推進されています。作業療法は、医療・保健・福祉・教育・就労など幅広い領域において、子どもから大人まで年齢を問わず貢献できる職種です。それぞれの領域が高度に発展する中で細分化されてきているものの基本は共通であり、領域を超えてともに高め合うことで、「奈良をつくる」「地域をつくる」ことへのさらなる貢献や県民の負託により応えていくことができればと思います。
  本学会ではこのようなことを踏まえ、学会テーマを「子どもから大人までを応援する作業療法 ~科学と実践~」とし、特別講演・教育講演・セミナーを企画致しました。口述発表では研究や実践などの発表を通じて、お互い学び合い高め合うことができればと思います。ひと・作業はデジタル的ではなくアナログ的かと思います。したがって、子どもから大人までのひとを応援する作業療法もアナログ的かと思います。一人一人に応じた作業を提供できる柔軟性や広さが良さである一方で、効果があってもそれを科学として客観的に示しづらいという悩みがあります。実践を一番大切にしながらも科学も重要で追及することが必要なこの時代、実践と科学がよりとけて一つになることができればと思います。オンラインのメリットを生かし、丸一日では視聴が難しいぐらいの盛りだくさんなプログラムとなりました本学会が、皆様にとってなにがしかのきっかけや気づきが得られる有意義な機会になればと思っております。
  最後に、本学会は奈良県作業療法学会では初のオンライン学会です。初のオンラインでありながらも挑戦を恐れず、口述発表重視・ライブ感重視をしたいという強い思いからライブ配信とオンデマンド配信にて開催致します。ぎりぎりまで模索していた対面での学会を断念してから、急ピッチでありながらも学会開催の新しい形として次につながる財産となればという思いで一から手探りで準備をしてまいりました。学会開催にあたり先生方のお力添えを頂けましたら幸いです。何卒よろしくお願い致します。