[S-37] 膜ラフトと神経疾患

[S-37-2] アルツハイマー病態と膜ラフト

荒木 亙 (国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第６部)

細胞膜は、細胞の恒常性維持、膜輸送、シグナル伝達、細胞骨格構成、外界からの隔離などの重要な機能を司っている。細胞膜の脂質類とタンパクは膜上に均一に分布している訳ではなく、ある特定の脂質が互いに会合し、それらと親和性を有するタンパクが集簇してマイクロドメインを形成している。このドメインは、「膜ラフト（membrane rafts）」と呼ばれ流動的で、刺激に応じて必要な分子の再会合を繰り返している。
近年、膜ラフトは細胞の正常機能のみならず、種々の疾病の病態例えば、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患、ギランバレー症候群や視神経脊髄炎などの神経免疫疾患、プリオン病の病態への関与も指摘されている。本会では、広く脂質類と膜タンパクが作り出す世界をリビューし、膜ラフトが神経細胞の正常機能発現や上記疾患の病態発現に如何に関与しているのかそれらの最新結果を紹介し、未来への展望・共同研究網の構築を考える機会としたい。

1985年京都大学医学部卒業。1992年京都大学大学院修了（医博）。国立精神・神経センター神経研究所、マサチューセッツ工科大学にてポスドクとして勤務。1998年より国立精神・神経医療研究センター神経研究所　疾病研究第６部　室長。2018年より同研究員。専門はアルツハイマー病を含めた神経変性認知症疾患。