[PG01-26] 蜂の子食文化の生態学:シダクロスズメバチの餌生物と市民による飼育実践
東海地方の中山間地域における蜂の子食文化では、シダクロスズメバチとクロスズメバチの幼虫や蛹が主に食べられる。それらの地域では初夏に野外で採集した巣を木箱に入れ、自宅の庭などで蜂に餌を与えて巣を大きく育てさせ、秋にこれを食用にする。愛好家によって与える餌は様々だが、本属の餌種は岩田(1971)以降、学術的に調べられておらず、知見は十分でない。本研究ではシダクロスズメバチの自然環境と飼育環境下での餌生物種を、蜂の腸内容物にDNAメタバーコーディング法を適用して調査した。また、地域住民の蜂の自然環境下での餌の認識と飼育実践状況を調査した。その結果、シダクロスズメバチが多数の昆虫や節足動物、鳥類を始めとする脊椎動物を捕食していることが示された。さらに、一部の地域住民は古式狩猟を通して蜂が鳥類を捕食することを目撃していることが明らかになった。鶏肉やウズラ肉を餌に使用する飼育者もおり、この方法は蜂の自然下での生態を反映させられており合理的で、洗練されていると考えられる。大会では、本種が捕食していると考えられる昆虫、節足動物の特徴についても議論したい。