[PS01-02] 黒色を呈する昆虫の赤外線反射機能
黒色の昆虫は可視光吸収性の高さから熱利得に優れるとされている。しかし色の特色のみが注視され、色と関係がない近赤外線波長の反射性、鞘翅が持つ熱に対する特性について分析・解析した研究は ほぼ無い。本研究では、強い光沢をもつM.tarandusなど５種の甲虫の鞘翅の構造、および近赤外線反射性、またそれに関連付けられる近赤外線光照射下での温度変化を調べた。その結果M.tarandusの鞘翅は、近赤外線に対し高い吸収性、熱利得性を有していることが明らかになった。さらに本種鞘翅の表面ワックスを除去処理し、光学特性を測定したところ、近赤外域の反射率のみが有意に上昇した。これらの結果から、鞘翅の形態的特徴やワックス素材が熱利得の制御に深く関与していることが示唆された。本研究成果は、近赤外線の光学的特性を新技術・新素材開発へ展開することを目指すものであり、エネルギー問題の解決に貢献できる可能性がある。