日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PS01] ポスター発表(学生A:コアタイム1)

2024年3月29日(金) 11:30 〜 12:30 桜(学生) (桜)

[PS01-15] ハチジョウノコギリクワガタは何者なのか?~ゲノム生態学的手法によるアプローチ~

◯岸野 紘大1、若宮 健1、井戸川 直人1、岡田 泰和1 (1. 都立大・院理)

性選択された誇張形質は,進化的に不安定であると考えられており、生存に不可欠でないため頻繁に獲得されたり失われたりする。クワガタムシのオスの大あごは、性的誇張形質の典型的な例であり、グループ内で形や大きさが多様化している。
本研究では、ノコギリクワガタ属の中で大アゴの大きさが異なる2種、P. inclinatus(本土種)とP. hachijoensis(島嶼種)に注目した。両種の生態的差異と遺伝的関係を調査した。
両種の雄の形態学的比較から、島嶼種は本土種に比べていくつかの形質(下顎、脚、翅など)において相対的にサイズが小さくなっていることが示された。飢餓条件下での生存時間の比較から、島嶼種(P. hachjoensis)の雌は飢餓に強い耐性を持っていることが示唆された。全ミトコンドリアゲノムを用いた分子系統解析の結果、島嶼種と本土種は明確に異なるクレードを形成していた。また、集団遺伝構造解析のため、P.inclinatusの全ゲノムドラフト配列を構築した。全ゲノム情報に基づくPCAの結果とAdmixture解析は、より詳細な島嶼個体群の遺伝的特殊性を明らかにした。また、2種間のFst解析によって得られた、雄の大あごの大きさを制御している可能性のある候補遺伝子についても紹介する。