日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PS01] ポスター発表(学生A:コアタイム2)

2024年3月29日(金) 12:30 〜 13:30 桜(学生) (桜)

[PS01-22] ハイイロゲンゴロウにおける雄の吸盤と交尾行動の関係の検証

◯竹内 成太1、松村 健太郎2 (1. 香大・農、2. 岡大・農)

有性生殖を行う多くの生物において、雄にとって交尾回数の増加は高い適応度につながる一方で、雌にとっては交尾回数の増加に伴って適応度が減少することもある。このような雌雄の生殖に関する利害の不一致から性的対立が生じ、雌雄で異なる性的形質が進化すると考えられている。ゲンゴロウ類は顕著な性的対立が生じている昆虫の一つとして知られている。その多くの種において、雄は肥大した前脚ふ節に発達した吸盤を持ち、これは水中でも雌に張り付いて交尾を行う上で有効であると考えられている。一方で、雌は鞘翅や前胸背板に顕著なスジや毛があり、これらは雄の吸盤が張り付きにくくする対抗形質であると考えられている。しかしながら、ゲンゴロウ類を対象として実際に交尾行動を観察した研究例は数少ないままである。そこで本研究では、前脚に2個の大吸盤と多数の小吸盤を左右一対持つハイイロゲンゴロウ(Eretes griseus)を対象として、雄の吸盤の発達と交尾成功率の関係について調査した。その結果、小吸盤が多い雄ほど交尾に成功しやすいことが明らかになった。一方で、本種の雌の背側表面に顕著な性的二型が見られなかったことから、本種の雌にはその他の種とは異なる対抗適応が生じていることが予想される。