日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PS01] ポスター発表(学生A:コアタイム2)

2024年3月29日(金) 12:30 〜 13:30 桜(学生) (桜)

[PS01-26] 深層学習を用いた昆虫の3次元追跡アルゴリズムの開発

◯森 大佑1、速水 裕樹2、藤本 泰文2、後藤 勲3 (1. 宮城大院・食産、2. 伊豆沼財団、3. 宮城大・食産)

生態学研究の発展には長期的かつ定量的な個体の追跡が重要であるが、現在、それは目視による観察測定がほとんどで、研究者の時間的・労力的コストが大きいという課題がある。また、測定対象が小型の昆虫の場合、追跡には非侵襲性が求められる。例えば、近年開発されたタグや赤外線を使用した手法は、活動への影響やデータ収集時の測定ノイズなどが考えられる。一方で深層学習を用いた昆虫のモニタリング手法が近年開発されつつあるが、3次元的な追跡は未だ発展途上である。本研究では、安価な複数のカメラと深層学習を用いた、昆虫の自動的・非侵襲的な3次元追跡手法を開発した。さらに、カメラと昆虫の距離が原因で生じる画像深度による予測誤差を補正するアルゴリズムを開発し、追跡精度を定量的に評価した。模型を用いて本アルゴリズムの追跡精度を計測した結果、テストデータ全体の平均誤差は約10.33ピクセル(1.033cm)であった。さらに、観察対象として用いたハラビロカマキリを22時間撮影し、3次元的に追跡したところ、全データの約92.8%で位置推定が可能であった。本手法を発展させ、測定対象の状態推定も可能になれば、生態学における測定対象の行動や状態等のパターンを発見し、測定対象と環境の関係を明らかにする一助となると考えられる。