[PS01-39] 幼生生殖タマバエの自然環境下における生態の解明
陸上生態系で最も繁栄している昆虫の中でも,推定種数が最大とされているハエ目タマバエ科の適応機構や繁殖戦略の解明は,昆虫の適応放散を理解する上で重要である。タマバエ科の菌食性種の中には,“母幼虫”または“母蛹”が単為生殖的に“子幼虫”を生む幼生生殖という特殊な繁殖様式をもつものがいる。しかし,生態についての研究はほとんどなく,国内においても土着種は知られていなかった。演者らは,日本各地で調査を行い,幼生生殖タマバエが国内に広く分布していることを確認した。本研究では,幼生生殖タマバエの自然環境下における生態の解明を目的に,佐賀県内の山地2地点で定期調査を実施した。毎月,一定数の枯れ木,土壌,リター層を無作為にサンプリングし,幼虫の資源や枯れ木の腐朽型,腐朽段階などの選好性および発生消長を調査するとともに,同地点に設置したマレーズトラップによって成虫を採集した。その結果,幼虫は様々な腐朽型や腐朽段階の枯れ木だけでなく,土壌やリター層からも採集された。このことから,自然環境下において,幼生生殖タマバエの幼虫は,多様な枯れ木や土壌,リター層などの資源を利用していることが示唆された。成虫の発生消長も含め,幼生生殖タマバエの自然環境下における生態について考察する。