日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

小集会

[W02] 実験室で進化する昆虫 -実験進化/人為選抜を議論する-

2024年3月29日(金) 18:30 〜 20:00 B会場 (萩)

世話人:髙田悠太、上野尚久、松村健太郎

19:15 〜 20:00

[W02-02] 人為選択実験:ミバエと甲虫での研究事例紹介

◯宮竹 貴久1 (1. 岡山大学)

最初に人為選択(人為選抜とも言う:Artificial selection)とはどのようなものか概説する。そして人為選択を行う際に注意すべきことを説明する。次に、私が取り組んできたウリミバエと甲虫を材料とした人為選択実験の結果を紹介する。ウリミバエでは発育期間の長短に人為選択をかけると、選択に対する反応として交尾する時刻が相関して変化した。これは概日時計を構成する遺伝子に変異が生じるためであった。またメスの繁殖開始齢に人為分断選択を施すと、寿命が変化し、繁殖と寿命のトレードオフを検証することができた。アズキゾウムシを用いた実験では、飛翔と死んだふりに遺伝相関の見られることがわかった。コクヌストモドキの死んだふり持続時間に分断選択を施して、長く死んだふりをする系統と、死んだふりをしない系統を確立できた。これらの系統は、死んだふりのメリットとデメリットについて適応度の視点から知る機会を与えてくれた。さらに死んだふりの長さを司る生理物質と、その分子基盤も知ることができた。以上の結果より、人為選択実験について、最近になって見えてきたそのメリットと、その限界についてもお話しできればと考えています。