第60回日本小児神経学会学術集会

セッション情報

実践教育セミナー

[JS6] 実践教育セミナー6
小児神経科医のための診断推論

2018年5月30日(水) 15:30 〜 18:00 第3会場 (2F 201)

座長:杉田克生(千葉大学教育学部基礎医科学)

【企画・趣旨のねらい】
 診断推論とは,診断に至るまでの思考プロセスである.我々が診断する際には,既成の疾患概念で診断を推論しており,概念の及ばない部分は意識化されない.臨床現場では,日々我々は「システム1:直観的思考」と「システム2:分析的思考」の2者を巧みに駆使して診断している.「直観的思考」は,「最初に考えた診断に固執する」,「最近の症例やインパクトの強い経験に引きずられる」,「自分の診断に都合の良い所見のみ注目する」などいくつかのバイアスに影響されやすい欠点がある.このバイアスを避け「見落とし」を防ぐために,病態生理学と臨床疫学を網羅的に吟味して考える「分析的思考」が併せて求められる.考えられる鑑別診断を列挙し,身体所見や臨床検査からそれぞれを除外,確定していくプロセスは,見逃しを極力なくすため重要である.
 本学会では「小児神経診療のための診断推論」と題して実践教育セミナーを2回開催したが,多くの方々が参加され企画者としては望外の喜びであった.第3回本実践教育セミナーの講演者は多くの臨床経験を通じて「直観的思考+分析的思考」両者を鍛えられた小児神経科ならびに神経内科の先生方である.稲垣真澄先生には「小児神経疾患への発達症候学的アプローチ」と題して臨床症候学の重要性をお話いただく.熊田聡子先生には「動画と神経生理検査で診断する小児神経疾患」と題して様々な臨床症状の提示をお願いした.神経内科医で医学教育に従事されている伊藤彰一先生には「神経科医養成のための教育実践法」と題し,臨床事例を通して神経診断能力高める実践的教育法をうかがう.この3人の先生方から,臨床現場に役立つ診断推論の思考プロセスを惜しみなく伝授していただくセミナーである.