第60回日本小児神経学会学術集会

セッション情報

ランチョンセミナー

[LS2] ランチョンセミナー2
日常臨床に潜むカルニチン欠乏症

2018年5月31日(木) 12:30 〜 13:20 第4会場 (3F 301)

座長:高柳正樹(帝京平成大学健康医療スポーツ学部看護学科)

共催:大塚製薬株式会社

【企画・趣旨のねらい】
 L—カルニチン(β—hydroxy—γ—tri—methylammonium butyrate:(CH3)3N+CH2CH(OH)CH2COO—)は,分子量161のビタミン様物質で,ヒト自身が生合成できるのは一日の必要量(60—200 mg)の3割に過ぎず,残りを赤身の肉を中心とする食物から得ている.菜食主義者などにカルニチン欠乏の起こりやすい理由がここにある.L—カルニチンは,アシル—CoAがミトコンドリア膜を透過する際に必須の物質であり,その欠乏は長鎖脂肪酸の利用障害をきたす他,ミトコンドリア内に蓄積した有害アシルCoAの除去(ミトコンドリアレスキュー)にも支障をきたし,重篤な場合は突然死や急性脳症,心筋症をきたすことが知られている.
 本講演ではまずL—カルニチンの生合成過程を説明し,肝不全,腎不全症例で欠乏症の起こる原理を理解いただく.続いて原発性,続発性に分けてカルニチン欠乏症の成因を説明し,日常診療において症状誘発の誘因となりやすいバルプロ酸を中心とする抗けいれん薬,およびピボキシル基含有抗生剤,さらに長期経腸栄養によるカルニチン欠乏症の症例を,実例を交えて説明する.カルニチン欠乏症例の多くは潜在性であり,これら抗けいれん薬や抗生剤の使用で,ある日突然低血糖やけいれんなどの重篤な症状を発症することを是非肝に銘じていただきたい.最後に最近全国に広まったタンデムマスを用いた新生児マススクリーニングシステムについて脂肪酸代謝異常症を中心に説明し,講演の結びとする予定である. 本講演が少しでも皆様の日常診療のお役に立ち,そして1人でも多くの患者さんを不幸な転帰から救うことに繋がれば幸いである.