波多野孝史 (JR東京総合病院泌尿器科)
セッション情報
共催シンポジウム
[SS] 結節性硬化症の診療を通じて多施設・多領域連携を築く
2018年6月1日(金) 15:20 〜 17:20 第2会場 (国際会議室)
座長:高橋孝雄(慶應義塾大学医学部小児科学教室)、齋藤伸治(名古屋市立大学大学院医学研究科新生児・小児医学分野)
共催:ノバルティス ファーマ株式会社
【企画・趣旨のねらい】
結節性硬化症(TSC)は遺伝子異常による先天性の多臓器疾患で,わが国でも1万人程度の患者さんがおられると推定されています.胎児の心エコーで偶然,妊娠中に診断される場合,点頭てんかんなどのてんかん発作を契機に小児期に診断される場合,腎病変からの出血で急性発症し診断される場合,肺病変が徐々に進行し最終的に診断に至る場合,さらには成人期の精神神経症状により診断される場合など,その臨床像,経過は極めて多彩です.このように病変,症状が多臓器にわたり,なおかつ発症年齢,重症度が多彩であり,さらに確定診断にはTSCを念頭においた検査が必要となるため,病態が進行するまで診断に至らないケースも多いといわれています.
治療は対症療法が中心で,その選択肢は年齢,症状などにより多岐にわたります.慢性,進行性の病態が基本であり,完治が難しいことも多いことから患者は生涯,病気とともに生きることになります.しかし近年,高度,先進的な治療法も開発され,治療成績が飛躍的に向上する可能性が出てまいりました.例えば,腎血管筋脂肪腫に対して塞栓術が,肺リンパ脈管筋腫症,腎血管筋脂肪腫,上衣下巨細胞性星細胞腫に対してmTOR阻害剤の内服薬が用いられるようになり,さらに,点頭てんかんに対する新たな薬物治療も承認されました.
以上のような背景から,診断,治療の双方において,専門チームによる診療連携の必要性が高まってまいりました.2016年発刊の「結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫 診療ガイドライン」(日本泌尿器科学会/日本結節性硬化症学会)を見ても,患者の年齢や合併症に合わせた包括的なチーム医療が患者さんやそのご家族のために強く求められていることは明らかです.
TSCが多くの領域の専門家が力を合わせて取り組むべき疾患の代表であるとの認識に立って,このシンポジウムを企画させて頂きました.TSCのより良い診療形態についてご議論頂くことを通じて,患者中心の多施設・多領域連携のあるべき姿について考える良い機会にもなるのではないかと期待しております.
今井克美 (国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター)
永瀬裕朗 (神戸大学医学部附属病院親と子の心療部)
足立昌夫 (あだちこども診療所小児科)