石垣景子 (東京女子医科大学医学部小児科)
セッション情報
シンポジウム
[SY10] シンポジウム10
小児神経難病の地域におけるマネジメント
2018年5月31日(木) 15:40 〜 17:20 第5会場 (3F 302)
座長:石川悠加(国立病院機構八雲病院小児科)、藤井達哉(滋賀県立小児保健医療センター小児科)
【企画・趣旨のねらい】
1974年に指定難病に認定された筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis=ALS)など成人神経難病においては,ケアシステムが長年をかけて作られてきた.在宅人工呼吸は,1978年に川村らがALSで開始した.近年,小児においても,2009年に脊髄性筋萎縮症,2015年に筋ジストロフィー,先天性ミオパチーが難病指定になり,2015年から小児慢性特定疾病にもなった.
現在,小児神経難病において,在宅人工呼吸などの医療的ケアの活用により生命予後が改善し,欧米では関連ガイドライン(J Child Neurolにケアの国際ガイドライン,米国で2016年に小児の気管切開による在宅人工呼吸ガイドライン,カナダで2017年に小児の在宅人工呼吸のガイドライン)も公表され,成人神経難病に準じたケアシステムの充実が課題である.子育て,教育,就労においても,変化しつつある予後や疾患理解を深め,医療的ケアの環境整備も求められる.以前に比して国立病院機構の筋疾患病棟への小児期の長期入院は減り,大学病院や小児病院,地域基幹病院,外来や在宅クリニックによる診療が増えている.レスパイトのニーズは高いが,十分ではない.18歳以降では,成人ICUや内科系のベッドに入院を要する.しかし,移行には過程を要し,成人移行を見すえた専門医療拠点とケアシステム作りを関係科・多職種・病院間連携で進める必要がある.
米国で裕福な健康保険に加入しているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy=DMD)48家族に調査したところ,緩和ケア(palliative care)の必要性については,若い神経筋疾患,長期にわたる慢性疾患のため,認めたくないという思いが強い(Muscle & Nerve 44:93—101:2011).また,終末期ケア(end of life care)のイメージにとらわれる傾向もあった.呼吸ケアを含めた緩和ケアはQOL維持向上に大事であった.一方,事前指示書,リビングウィル,後見人制度などは,1%程度にしか行われず,その理由は,患者家族と医師双方に苦痛や不快を伴うからであった.小児期の緩和ケアは,アクセスと利用に多面的要素があり,個人,介護者,医療者,医療システム自体に課題がある.
シンシナティー小児病院では2000年からDMD熟練ケアチームが120名のDMD(5~30歳)を診療している(J Pediatr 2016;171:183—8).本邦でも小児神経難病の専門医療・ケアシステムの充実を進めたい.
里龍晴 (長崎大学病院小児科)
藤井達哉 (滋賀県立小児保健医療センター小児科)
熊谷俊幸 (くま在宅クリニック)
石川悠加、石川幸辰 (国立病院機構八雲病院小児科)