森下英晃 (東京大学大学院医学系研究科分子生物学分野)
セッション情報
シンポジウム
[SY14] シンポジウム14
小児神経とオートファジー病:基礎から臨床まで
2018年6月1日(金) 10:10 〜 12:10 第4会場 (3F 301)
座長:齋藤伸治(名古屋市立大学大学院医学研究科新生児・小児医学分野)、村松一洋(自治医科大学小児科)
【企画・趣旨のねらい】
大隅良典先生のノーベル賞受賞で示されたように,オートファジーは生命現象に必須の基本機能のひとつであり,現在の生物学の重要な研究領域である.オートファジーの破綻は悪性腫瘍や神経変性疾患のみならず小児神経疾患の原因ともなる.オートファジー関連疾患において脳形成障害が見られることは,神経発生においてもオートファジーが重要な役割を果たしていることを示している.しかし,オートファジーが関連する小児神経疾患は最近明らかになった状況であり,十分な知識が小児神経科医や小児科医に浸透しているとは言えない.そこで,本シンポジウムではオートファジーの基本から関連する小児神経疾患の臨床までを紹介することで,小児神経におけるオートファジーの理解を深めることを目的としている.
森下はオートファジーの分子メカニズム理解の到達点をまとめて,さらに,疾患モデルの開発について解説する.オートファジーはライソゾームでの分解を必要とするため,古くから知られているライソゾーム病と深く関連している.その関連に焦点をあてて,大友が説明する.臨床からはオートファジーと関連する代表的小児神経疾患のひとつであるVici症候群を齋藤が,Static encephalopathy of childhood with neurodegeneration in adulthood(SENDA)/Beta—propeller protein—associated neurodegeneration(BPAN)を村松が発表する.Vici症候群は重度知的障害,てんかん,脳梁欠損を特徴とする疾患であり,てんかん性脳症の一つである.SENDA/BPANは大脳基底核への鉄沈着を示す進行性の神経変性疾患であるが,小児期には原因不明の知的障害やてんかんを示し,比較的頻度が高いことが注目されている.村松はSENDA/BPANに対する分子生物学的な検討と治療への展望について触れる予定である.
本シンポジウムを通して小児神経疾患とオートファジーとの関係を学ぶと共に,オートファジー関連疾患についての理解を広めることができればと願っている.
大友孝信 (川崎医科大学病態代謝学)
齋藤伸治 (名古屋市立大学大学院医学研究科新生児・小児医学分野)
村松一洋 (自治医科大学小児科)