寺嶋宙 (国立成育医療研究センター器官病態系内科部神経内科)
セッション情報
シンポジウム
[SY18] シンポジウム18
重篤な神経疾患を抱える子どもの緩和ケア -終末期を見据えた話し合いについて-
2018年6月1日(金) 14:40 〜 16:40 第4会場 (3F 301)
座長:前垣義弘(鳥取大学医学部脳神経小児科)、余谷暢之(国立成育医療研究センター総合診療部緩和ケア科)
【企画・趣旨のねらい】
神経疾患における緩和ケアは特有の難しさがあると言われている.
がんは,進行しても比較的,全般的機能が保たれ,死亡1,2か月前に急速に機能の低下が見られることが多い.またがんは,原発巣や種類が違っても,症状や臨床経過において一定の共通性,法則性が認められ,それらは終末期になればなるほど顕在化するという特徴がある.
一方で,神経疾患においては,終末期が長期に亘り,そして変化しやすい特徴がある.小児神経疾患の場合,きちんとした診断がつくまでに,数か月から年余に亘ることがあり,きちんとした診断がつかないままになっていることも珍しくない.そのため,疾患の経過を予測することが困難である.仮に診断がついたとしても,症状や重症度に幅があるため,共通性,法則性を持って対応することは難しく,緩和的な対応が必要かどうかの判断は疾患によるというよりもその子が必要かどうかで判断せざるを得ない.終末期を見据えた話し合いを行っておくことは緩和ケアの大切な側面であるが,神経疾患における難しさがそこにある.
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは「患者及びそのケア提供者と医療者との間で価値,人生の目標,将来の医療に関する望みを理解し共有しあう自発的な話し合いのプロセス」のことを指す.ACPの目標は,重篤な疾患において患者・家族の価値や目標,選好を実際に受ける医療に反映させることにある.事前に話し合いを行い,その背景や理由,価値観を共有することで,重篤な神経疾患を抱える子どもを診療する際に突然直面する複雑な医療状況において患者・家族の価値や目標,選好を実際に受ける医療に反映させることが可能になる.特に神経領域においては,急変時の話し合いはがん領域に比較して行われている頻度が高いのに対して,病状についての話し合いや,病状理解の確認などの話し合いががん領域に比べて行われない傾向があることもわかっており,日常診療の中で患者家族と現在の病状の共有とこれからの見通しを意識して話し合うことが大切といえる.
本セッションでは,重篤な神経疾患の診療において終末期を見据えた話し合いの重要性や意義についてまず説明し,それをどのように切り出し,どのように進めていくことがよいかについて症例を踏まえて皆さんと考える機会にしたい.
岡崎伸 (大阪市立総合医療センター小児神経内科)
余谷暢之 (国立成育医療研究センター総合診療部緩和ケア科)
笹月桃子 (西南女学院大学保健福祉学部、九州大学病院小児科)
板井孝壱郎 (宮崎大学医学部社会医学講座生命・医療倫理学分野、宮崎大学大学院医学獣医学総合研究科生命倫理コーディネーターコース、宮崎大学医学部附属病院中央診療部門臨床倫理部)