熊崎博一 (金沢大学子どものこころの発達研究センター)
セッション情報
シンポジウム
[SY19] シンポジウム19
これからの発達支援
2018年6月1日(金) 15:10 〜 17:10 第1会場 (コンベンションホールB)
座長:広瀬宏之(横浜市療育相談センター)、柴田光規(川崎西部地域療育センター)
【企画・趣旨のねらい】
発達障害の頻度が一割に及ぶことを踏まえ,新しい発達支援のグランド・デザインが求められている.これからの発達支援の要点は以下の通りである.
(1)医療モデルから社会モデルへ:発達支援は「原因を探求し,異常を検索し,それを治療する」という医療モデルでは役に立たない.支援の勘所は,日常生活の困難さの軽減であり,社会適応の改善である.そのためには,当事者中心という視点を徹底する必要がある.
(2)多職種チームアプローチの要請:発達支援において医療のできることは限られている.教育・福祉・行政・司法等,多職種アプローチが不可欠である.
(3)支援の目標:専門機関での限られた療育から,日常生活での発達支援に拡げていく必要がある.つまり,他者によるアセスメントや支援に留まることなく,自己理解によるセルフサポート(自己支援)へ拡がっていく必要がある.
(4)多因子:神経学的スペクトラムに留まることなく,日常生活での適応度,年齢や発達に伴う症状の変遷,状況依存性,障害受容,家族の発達特性,マルトリートメントなど,支援にあたっては多様な要因を考慮に入れる必要がある.
これらの観点は,いわゆる「バイオ・サイコ・ソーシャル・モデルbio—psycho—social model」という,従来から強調されてきた複合的なアプローチの重要性を,発達支援に演繹したものに過ぎないかもしれない.
本シンポジウムではこれらを踏まえ,これからの発達支援について考える.
(1)DSM—5に導入された自閉スペクトラム症概念について,その問題点や支援の展望を述べる.
(2)適切な支援には診断だけに留まらない包括的なアセスメントが必要であり,それを代表するフォーミュレーション概念について述べる.
(3)これまでも心理士は発達支援の中核を担ってきた.公認心理師制度がスタートするにあたって,心理職による発達支援について述べる.
(4)子ども中心の療育から,家族全体への支援というパラダイム・チェンジについて述べる.
発達障害支援ではなく発達支援としていることにも留意されたい.特性段階からの支援により真の障害を減らすのも,これからの発達支援の要諦であろう.
原田剛志 (パークサイドこころの発達クリニック)
松嵜くみ子 (跡見学園女子大学心理学部臨床心理学科)
井上祐紀 (横浜市南部地域療育センター)