Akira Oka (Department of Pediatrics, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo)
Session information
Symposium
[SY3] Symposium 3
Progress in the clinical management of congenital cytomegalovirus infection
Thu. May 31, 2018 10:10 AM - 12:10 PM Room 3 (2F 201)
Chair:Hiroyuki Moriuchi(Department of Pediatrics, Nagasaki University Graduate School of Biomedical Sciences)
【企画・趣旨のねらい】
先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症はダウン症候群に匹敵する頻度で生じているにも関わらず,その多くは見逃されている.その理由として,出生時の臨床スペクトラムは幅広くまた非特異的であることや,遅発性発症例も少なくないことが挙げられ,事実「原因不明」とされてきた発達遅滞,てんかん,脳性麻痺,難聴,自閉症などの患児の中に,先天性CMV感染症が潜んでいる.産科医や新生児科医だけではなく,様々な神経・発達学的障害を持つ患児の診療にあたる小児神経専門医が常に本症の存在を頭に置いて対応することが求められる.出生後すぐに本症が疑われた場合でも,信頼性が高いPCR診断法が(本企画提出時点で)保険適用外であることが足枷となって診断漏れが生じている現状も,一刻も早く打開しなければならない.全新生児を対象とした先天性CMV感染のスクリーニングも検討されているが,実現までのハードルは高い.それを踏まえて,ハイリスク児や新生児聴覚スクリーニングrefer児などを対象としたtargeted screeningの試みが地域的になされており,その成果が期待される.
早期診断に続く早期の抗ウイルス療法が聴力・発達予後を改善することが明らかになり,患児を確実に早期診断することの重要性が以前にも増して大きくなったと言える.しかし治療薬であるバルガンシクロビルは,副作用への懸念に加え,本邦において小児用剤形がないこと,そしてこの目的では保険適用外であることが普及の妨げとなっている.
さらに予防手段としてのワクチンの開発は困難を極めており,実用化までにはまだかなりの時間がかかるものと予想されている.従って,妊婦や妊娠可能な女性達へ感染予防のための生活上の注意を啓発することは,予防のために最も重要な活動となる.
これらの現状を打開すべく,2008年以降厚生労働科学研究費補助金や日本医療研究開発機構の支援による班研究が続いており,啓発・診断・治療の面で大きな進歩が見られるようになった.また患者の会も設立されて,本症の問題を社会に強くアピールすることによって認知度が上がってきたことが啓発の上でも大きな力となっている.本シンポジウムではこれらの進歩を概説するとともに,残された問題点を浮き彫りにし,今後に向けた課題を考えて行きたい.
Hiroyuki Moriuchi (Department of Pediatrics, Nagasaki University Graduate School of Biomedical Sciences)
Ichiro Morioka (Department of Pediatrics, Kobe University Graduate School of Medicine)
Yuji Inaba (1.Division of Neurology, Nagano Children's Hospital, Azumino, JAPAN, 2.Center for Perinatal, Pediatrics and Environmental Epidemiology, Shinshu University School of Medicine, Matsumoto, Japan)
Michiyo Yoshida (Association for Congenital Toxoplasma and Cytomegalovirus Infections,Japan)