三牧正和 (帝京大学医学部小児科)
セッション情報
シンポジウム
[SY4] シンポジウム4
ミトコンドリア病診療の現状と未来
2018年5月31日(木) 10:10 〜 12:10 第4会場 (3F 301)
座長:後藤雄一(国立精神・神経医療研究センターメディカル・ゲノムセンター)、三牧正和(帝京大学医学部小児科)
【企画・趣旨のねらい】
ミトコンドリア病はミトコンドリアの機能障害によっておこる病気の総称である.ミトコンドリアはほとんど全ての細胞に存在し,その異常は多彩な臨床症状をもたらすため,しばしば診断に苦慮し,治療にも困難を伴うことが多い.また,疾患原因遺伝子は核DNAとミトコンドリアDNAの両方に存在し,実に約300の遺伝子にミトコンドリア病における変異が報告されており,その病因は極めて多様である.しかしながら,近年次世代シーケンサーをはじめとする遺伝学的検査の進歩により診断率が向上しており,正確な病因診断に基づいた対応が期待される時代に入ったといえる.今後さらに多くの疾患原因遺伝子が明らかにされると考えられ,ミトコンドリア病の疾患概念自体の広がりにも対応しなければならない.
本シンポジウムでは,この多彩な臨床症状と多様かつ複雑な病因を踏まえ,まず日常診療での診断の難しさをもたらす要因を整理し,その困難を克服するための病因解析の現況や,バイオマーカー開発等の取り組みについて紹介していただく.また,多様な遺伝形式をとるミトコンドリア病の特殊性を踏まえた臨床遺伝学的な問題点,遺伝カウンセリングの実際についても解説いただく.治療においては,多彩な症状に応じた集学的な対応が必要とされ,非常に管理の難しい疾患である.現時点で有効性が示された根本的治療薬は存在しないが,生殖補助医療によって次世代へ疾患を伝えないための試みも始まっている.その現状と問題点について解説いただき,参加者の皆さまと討論を行いたい.一方,病態そのものをターゲットとした治験や,画期的な治療法開発にむけた研究も進んでいる.ミトコンドリア内に薬物や核酸を輸送するシステムの開発とその臨床応用への計画を紹介いただく予定である.参加者の皆さまには,難攻不落のミトコンドリア病克服への光明を感じていただくとともに,小児神経科医の役割と今後の展望について語り合いたい.
八ツ賀秀一 (久留米大学小児科)
竹下絵里1、2、杉本立夏2、後藤雄一2 (国立精神・神経医療研究センター病院小児神経科1、国立精神・神経医療研究センター病院遺伝カウンセリング室2)
末岡浩 (慶應義塾大学医学部産婦人科)
山田勇磨、原島秀吉 (北海道大学大学院薬学研究院)