藤井克則 (千葉大学大学院医学研究院小児病態学)
セッション情報
シンポジウム
[SY9] シンポジウム9
小児神経科医が知っておくべき末梢神経の臨床
2018年5月31日(木) 14:40 〜 16:10 第3会場 (2F 201)
座長:藤井克則(千葉大学大学院医学研究院小児病態学)、石山昭彦(国立精神・神経医療研究センター病院小児神経科)
【企画・趣旨のねらい】
小児の末梢神経疾患は電気生理診断の難しさもあり,苦手とする小児神経科医も多い.しかし治療法が確立されているものもあり,正しく診断して後遺症がないよう治療を行うことが重要である.本シンポジウムではよく知られた末梢神経疾患に焦点をあててレビューするとともに,最新の知見を提供することを目的とする.
シンポジウムの冒頭にまず帝京大学・園生雅弘教授に電気生理検査の要点をご解説いただき,末梢神経疾患における生理学的アプローチの重要性を理解していただく.各論としてGuillain—Barré症候群は,急性単相性の運動・感覚障害を呈する免疫性末梢神経疾患である.末梢神経の脱髄を主体とする急性炎症性脱髄性多発根神経炎(AIDP),軸索変性が主体の急性運動性軸索型神経炎(AMAN),運動神経軸索の変性に感覚も障害される急性運動感覚性軸索型神経炎AMSANの3型に分類される.病因は抗糖脂質抗体がAMANで検出され意義が確立している一方,AIDPやAMSANではほとんど検出されず病因は不明である.Fisher症候群では,1—3週前に上気道感染の既往を持つことが多く,眼筋麻痺,失調,深部腱反射消失を呈する.先行感染があり,髄液で蛋白細胞解離,単相性の経過を示すことからGuillain—Barré症候群の亜型と考えられている.1992年にFisher症候群患者の80—90%の血清に抗糖脂質抗体である抗GQ1b抗体が存在することが報告され,その診断的価値が確立された.慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)は慢性進行性ないし再発寛解性の,左右対称性に運動感覚障害を呈する脱髄性疾患である.末梢神経鞘に対する自己免疫が推定され,散在性ないし多巣性の炎症性脱髄病変が主因である.発症時は亜急性の経過をとることがありGuillain—Barr症候群との区別が困難だが,2か月以上かけて進行し,寛解と増悪を反復して慢性の経過をとることで診断される.遺伝性ニューロパチーは遺伝学的異常により末梢神経の軸索ないし髄鞘の障害を来す疾患である.遺伝性運動感覚ニューロパチー,遺伝性感覚性ニューロパチー,遺伝性感覚性自律神経ニューロパチーに大別される.Charcot—Marie—Tooth病(CMT)は,末梢神経の構成タンパクの異常が原因であり,最多の1A型はFISH検査で17番染色体の部分重複の検出をもって診断される.本シンポジウムでは小児の代表的末梢神経疾患が網羅されており,明日からの小児神経の診療に役立てていただければ幸いである.
武下草生子 (横浜市立大学附属市民総合医療センター小児総合医療センター)
石山昭彦 (国立精神・神経医療研究センター病院小児神経科)