11:15 AM - 11:25 AM
[O-1-05] 足部引っかかりと歩行恐怖心により歩行自立を阻害された脳出血一症例
【症例紹介】
初発の脳卒中患者で40歳台後半の女性。CTより左被殻出血の診断にて当院入院し18病日に回復期病棟へ転棟。退院時目標は発症直後の身体状況から歩行自立が困難であったこと、退院後に日中独居になることをふまえ屋内伝い歩き自立とした。
【評価とリーズニング】
107病日に初期評価を実施。右SIAS-motor(4,4,4,4,4)、表在感覚は混合性失語のため精査できず鈍麻。下肢筋力は両側MMT4、右足関節背屈ROM5°、底屈筋MAS1+。Trunk Impairment Scale(TIS)は16/21点で協調性に減点があり、Berg Balance Scale(BBS)は37/56点とほとんどの動作に見守りまたは介助が必要であった。また、重心動揺計測では安静開眼開脚立位及び左右重心移動の最大荷重量にて左と比べ麻痺側である右への荷重が不十分であった。10m歩行速度はT字杖と短下肢装具を装着した状態で実施し0.27m/s、Modified Gait Efficacy Scale(mGES)にて37/100点と平地や不整地など全ての項目に歩行恐怖心が強く、右前遊脚期に足部の引っかかりがあり転倒の可能性が高いことから軽介助が必要でFunctional Ambulation Categories(FAC)は2であった。初期評価より、歩行自立には体性感覚が影響し右立脚期への荷重が不十分となったことによる右前遊脚期の足部の引っかかりと歩行恐怖心が関係していると考察した。
【介入と結果】
問題点とした体性感覚に対しては、平地およびマット上でつま先立ち、つま先上げ、スクワット、左右前後重心移動、片脚立位を実施。課題中は自己の足部を意識するように指示した。また、歩行恐怖心に対しては、mGESから特に恐怖心の強かった不整地、階段、屋外などの歩行を繰り返し実施した。3週間後の最終評価は体性感覚では混合性失語の改善もみられたため、表在感覚6/10であった。SIAS、MMT、ROM、MAS、TISには大きな変化なくBBSは立位保持、方向転換、踏み台昇降の介助量が軽減し40/56点となった。重心動揺計測では安静開眼開脚立位及び左右重心移動の最大荷重量にて右荷重量に改善がみられた。10m歩行速度は0.3m/s、mGESは44/100点、右前遊脚期での足部の引っかかりは軽減しFAC4となりADLにて介助が不必要となったため133病日に自宅退院に至った。
【結論】
歩行自立困難であった症例に対し、体性感覚や歩行恐怖心に改善が見られ足部の引っかかりが減少したことにより屋内歩行自立となった。本症例においては、身体的要因に加え歩行恐怖心などの心理的要因も歩行自立度の改善に寄与したと考えられた。しかし、足部の引っかかりが残存したことからこれには他の要因も関係したことが考えられた。
【倫理的配慮・説明と同意】
症例には発表内容を口頭にて説明し、書面にて同意を得た。また、本発表は当院倫理委員会にて承認を得ている(承認番号:HG-IRB2116)。
初発の脳卒中患者で40歳台後半の女性。CTより左被殻出血の診断にて当院入院し18病日に回復期病棟へ転棟。退院時目標は発症直後の身体状況から歩行自立が困難であったこと、退院後に日中独居になることをふまえ屋内伝い歩き自立とした。
【評価とリーズニング】
107病日に初期評価を実施。右SIAS-motor(4,4,4,4,4)、表在感覚は混合性失語のため精査できず鈍麻。下肢筋力は両側MMT4、右足関節背屈ROM5°、底屈筋MAS1+。Trunk Impairment Scale(TIS)は16/21点で協調性に減点があり、Berg Balance Scale(BBS)は37/56点とほとんどの動作に見守りまたは介助が必要であった。また、重心動揺計測では安静開眼開脚立位及び左右重心移動の最大荷重量にて左と比べ麻痺側である右への荷重が不十分であった。10m歩行速度はT字杖と短下肢装具を装着した状態で実施し0.27m/s、Modified Gait Efficacy Scale(mGES)にて37/100点と平地や不整地など全ての項目に歩行恐怖心が強く、右前遊脚期に足部の引っかかりがあり転倒の可能性が高いことから軽介助が必要でFunctional Ambulation Categories(FAC)は2であった。初期評価より、歩行自立には体性感覚が影響し右立脚期への荷重が不十分となったことによる右前遊脚期の足部の引っかかりと歩行恐怖心が関係していると考察した。
【介入と結果】
問題点とした体性感覚に対しては、平地およびマット上でつま先立ち、つま先上げ、スクワット、左右前後重心移動、片脚立位を実施。課題中は自己の足部を意識するように指示した。また、歩行恐怖心に対しては、mGESから特に恐怖心の強かった不整地、階段、屋外などの歩行を繰り返し実施した。3週間後の最終評価は体性感覚では混合性失語の改善もみられたため、表在感覚6/10であった。SIAS、MMT、ROM、MAS、TISには大きな変化なくBBSは立位保持、方向転換、踏み台昇降の介助量が軽減し40/56点となった。重心動揺計測では安静開眼開脚立位及び左右重心移動の最大荷重量にて右荷重量に改善がみられた。10m歩行速度は0.3m/s、mGESは44/100点、右前遊脚期での足部の引っかかりは軽減しFAC4となりADLにて介助が不必要となったため133病日に自宅退院に至った。
【結論】
歩行自立困難であった症例に対し、体性感覚や歩行恐怖心に改善が見られ足部の引っかかりが減少したことにより屋内歩行自立となった。本症例においては、身体的要因に加え歩行恐怖心などの心理的要因も歩行自立度の改善に寄与したと考えられた。しかし、足部の引っかかりが残存したことからこれには他の要因も関係したことが考えられた。
【倫理的配慮・説明と同意】
症例には発表内容を口頭にて説明し、書面にて同意を得た。また、本発表は当院倫理委員会にて承認を得ている(承認番号:HG-IRB2116)。
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