12:05 PM - 12:15 PM
[O-3-03] 移乗動作の回旋相から着座相にかけて安全性・安定性が低下した右脳梗塞左片麻痺患者患者の症例報告
【症例紹介】
90歳代女性で、1年半前に右脳梗塞左片麻痺を発症した。現在は、デイケアを週4日利用され、リハビリテーションを実施している。自宅でのトイレ動作は娘と実施しており麻痺側方向への移乗が必要であるが軽介助(FIM4点)を要するため、改善が必要であった。
【評価とリーズニング】
本症例は、自宅と同様に右側にベストポジションバーを設置した環境では、移乗の回旋相から着座相の足の踏みかえで左股関節屈曲・内転が生じ、左下肢が浮くことで安全性・安定性低下が生じていた。座位姿勢は両股関節中等度屈曲(右>左)で骨盤左回旋・後傾位、両膝関節は中等度屈曲位(右>左)・両足関節底屈で両下腿軽度後傾位(右<左)であり、左踵は床面から浮いていた。立ち上がりでは屈曲相で左下腿前傾が乏しく、殿部離床相で左股関節屈曲・左膝関節屈曲・左足関節底屈により左踵が床面から離れることで左下肢への荷重が乏しくなっていた。以上の動作観察から、座位姿勢から既に左踵が浮き左荷重が乏しく、これが立ち上がり、移乗の左荷重量減少に繋がり安全性・安定性低下が生じていると仮説した。座位姿勢で左踵が浮いている要因として、座位姿勢での左膝関節屈曲角度が少なく、左足が右足より前方に接地していることを考えた。左膝関節屈曲ROMと大腿直筋筋緊張亢進を予測し、初期評価を行ったところ左大腿直筋の筋緊張亢進が著明であり、左膝関節屈曲ROMでは90°以降強い抵抗感があった。このことから、大腿直筋筋緊張亢進により骨盤後傾位での座位姿勢で左膝関節屈曲が生じにくいことで左踵が浮いてしまい、これにより立ち上がりや移乗時に左荷重困難となり安全性・安定性低下に繋がっていると考えた。
【介入と結果】
介入は、大腿直筋のダイレクトストレッチ、左下肢へ荷重をしながらの立ち上がり動作練習を行った。最終評価では、大腿直筋筋緊張が正常域に改善し、左膝屈曲ROMで110°まで抵抗感なく曲げることができるようになった。これらの改善により、座位姿勢において踵が床面に接地し、左下肢への荷重が増加したため、立ち上がりの安定性が向上し、トイレ移乗FIMは5点に向上した。しかし、移乗の回旋相から着座相の左への不安定性は残存した。
【結論】
治療の結果、座位姿勢と立ち上がり時の左下肢への荷重は増加したが、回旋相から着座相での左への不安定性は残存した。このことから、移乗の回旋相から着座相では、矢状面の動きだけでなく前額面・水平面での動きが加わるため、別の機能障害の影響が考えられ、再評価をしていく必要がある。
【倫理的配慮、説明と同意】
発表の趣旨について症例本人に説明し、書面にて同意を得た。
90歳代女性で、1年半前に右脳梗塞左片麻痺を発症した。現在は、デイケアを週4日利用され、リハビリテーションを実施している。自宅でのトイレ動作は娘と実施しており麻痺側方向への移乗が必要であるが軽介助(FIM4点)を要するため、改善が必要であった。
【評価とリーズニング】
本症例は、自宅と同様に右側にベストポジションバーを設置した環境では、移乗の回旋相から着座相の足の踏みかえで左股関節屈曲・内転が生じ、左下肢が浮くことで安全性・安定性低下が生じていた。座位姿勢は両股関節中等度屈曲(右>左)で骨盤左回旋・後傾位、両膝関節は中等度屈曲位(右>左)・両足関節底屈で両下腿軽度後傾位(右<左)であり、左踵は床面から浮いていた。立ち上がりでは屈曲相で左下腿前傾が乏しく、殿部離床相で左股関節屈曲・左膝関節屈曲・左足関節底屈により左踵が床面から離れることで左下肢への荷重が乏しくなっていた。以上の動作観察から、座位姿勢から既に左踵が浮き左荷重が乏しく、これが立ち上がり、移乗の左荷重量減少に繋がり安全性・安定性低下が生じていると仮説した。座位姿勢で左踵が浮いている要因として、座位姿勢での左膝関節屈曲角度が少なく、左足が右足より前方に接地していることを考えた。左膝関節屈曲ROMと大腿直筋筋緊張亢進を予測し、初期評価を行ったところ左大腿直筋の筋緊張亢進が著明であり、左膝関節屈曲ROMでは90°以降強い抵抗感があった。このことから、大腿直筋筋緊張亢進により骨盤後傾位での座位姿勢で左膝関節屈曲が生じにくいことで左踵が浮いてしまい、これにより立ち上がりや移乗時に左荷重困難となり安全性・安定性低下に繋がっていると考えた。
【介入と結果】
介入は、大腿直筋のダイレクトストレッチ、左下肢へ荷重をしながらの立ち上がり動作練習を行った。最終評価では、大腿直筋筋緊張が正常域に改善し、左膝屈曲ROMで110°まで抵抗感なく曲げることができるようになった。これらの改善により、座位姿勢において踵が床面に接地し、左下肢への荷重が増加したため、立ち上がりの安定性が向上し、トイレ移乗FIMは5点に向上した。しかし、移乗の回旋相から着座相の左への不安定性は残存した。
【結論】
治療の結果、座位姿勢と立ち上がり時の左下肢への荷重は増加したが、回旋相から着座相での左への不安定性は残存した。このことから、移乗の回旋相から着座相では、矢状面の動きだけでなく前額面・水平面での動きが加わるため、別の機能障害の影響が考えられ、再評価をしていく必要がある。
【倫理的配慮、説明と同意】
発表の趣旨について症例本人に説明し、書面にて同意を得た。
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