[P-1-06] 被殻出血により左片麻痺を呈した1症例 -非麻痺側の機能に着目して-
【症例紹介】50代女性、構音障害、左片麻痺が出現、近医にて脳出血の診断とされ当院に救急搬送された。画像所見にて右被殻出血と診断。発症翌日に開頭血腫除去術を施行。
【評価とリーズニング】初期評価時(第3病日)、Japan Coma Scale(JCS)はⅠ-2、Brunnstrom stage(以下BRS)右上肢Ⅱ右手指Ⅰ右下肢Ⅱの弛緩性麻痺、体幹は両側低緊張を呈していた。感覚機能は表在感覚・深部感覚共に重度鈍麻を認めており、Stroke Impairment Assessment Set(以下SIAS)は19点(麻痺側運動機能2点・体幹機能0点)であった。左上下肢・両側体幹の筋緊張低下から、病棟内ADLは、端座位保持不可、移乗動作中等度介助、立位保持不可であり、トイレ動作では2人介助を要した。
座位姿勢において麻痺側への転倒傾向を呈していたため非麻痺側への荷重を促したところ、頚部右側屈、右肩甲帯挙上、右股関節外転外旋位、骨盤右回旋、体幹の右側屈を認めた。この座位姿勢から麻痺側上下肢・両側体幹の低緊張に加え、感覚機能の低下により非麻痺側の過活動にて代償が生じていると考えた。非麻痺側の過活動は、動的座位姿勢の獲得や麻痺側の回復を阻害すると考え、座位姿勢から問題点を考えたところ、両側脊柱起立筋・右股関節周囲・右肩甲帯周囲の過活動、右腹部体幹筋の弱化が疑われた。これらに対し仮説検証を行ったところ右肩甲帯周囲への介入にて最も良好な反応を得た。
【介入と結果】右肩甲帯周囲(僧帽筋・広背筋・円筋群)に対し筋緊張を抑制した後、右肩甲帯のセッティングを行った。肩甲帯の安定が得られると、体幹の代償が軽減したためさらに右体幹部を促通した。これにより骨盤正中位での保持が可能となり両側腹部体幹の筋活動が得られ座位での動的安定性が得られ座位での転倒傾向が軽減した。最終評価時(第18病日)、BRSは右上肢Ⅱ手指Ⅱ下肢Ⅲ、感覚機能は表在・深部共に中等度鈍麻、SIASは34点(麻痺側運動機能3点・体幹機能4点)となり、麻痺側下肢の随意性・体幹機能の改善を認めた。座位姿勢では頚部右側屈・右肩甲帯挙上・骨盤右回旋・体幹右側屈が軽減され、正中位での座位保持が可能となった。活動病棟ADLでは座位保持、移乗動作、立位が見守りとなり、トイレ動作は1人介助にて可能となった。
【結論】本症例は右被殻出血によって、非麻痺側の体幹筋・四肢近位筋の弱化に加え、麻痺側感覚機能の低下により、非麻痺側の過緊張が起こり座位の動的安定性が低下を招いていると考えた。非麻痺側の過緊張により半球間抑制の不均衡が生じ損傷側の脳活動は抑制、麻痺側の活動が制限されると考え非麻痺側への介入を行なった。非麻痺側の過活動を抑制することで、正中位での座位保持が可能となり両側体幹部が賦活、体幹部の安定にて麻痺側上下肢の筋活動を得ることができた。脳血管障害の理学療法では、非麻痺側の過活動を除去し、麻痺側の活動を阻害しないような準備が重要であると考える。
【倫理的配慮、説明と同意】本症例はヘルシンキ宣言に基づき、口頭・書面にて同意を得た。
【評価とリーズニング】初期評価時(第3病日)、Japan Coma Scale(JCS)はⅠ-2、Brunnstrom stage(以下BRS)右上肢Ⅱ右手指Ⅰ右下肢Ⅱの弛緩性麻痺、体幹は両側低緊張を呈していた。感覚機能は表在感覚・深部感覚共に重度鈍麻を認めており、Stroke Impairment Assessment Set(以下SIAS)は19点(麻痺側運動機能2点・体幹機能0点)であった。左上下肢・両側体幹の筋緊張低下から、病棟内ADLは、端座位保持不可、移乗動作中等度介助、立位保持不可であり、トイレ動作では2人介助を要した。
座位姿勢において麻痺側への転倒傾向を呈していたため非麻痺側への荷重を促したところ、頚部右側屈、右肩甲帯挙上、右股関節外転外旋位、骨盤右回旋、体幹の右側屈を認めた。この座位姿勢から麻痺側上下肢・両側体幹の低緊張に加え、感覚機能の低下により非麻痺側の過活動にて代償が生じていると考えた。非麻痺側の過活動は、動的座位姿勢の獲得や麻痺側の回復を阻害すると考え、座位姿勢から問題点を考えたところ、両側脊柱起立筋・右股関節周囲・右肩甲帯周囲の過活動、右腹部体幹筋の弱化が疑われた。これらに対し仮説検証を行ったところ右肩甲帯周囲への介入にて最も良好な反応を得た。
【介入と結果】右肩甲帯周囲(僧帽筋・広背筋・円筋群)に対し筋緊張を抑制した後、右肩甲帯のセッティングを行った。肩甲帯の安定が得られると、体幹の代償が軽減したためさらに右体幹部を促通した。これにより骨盤正中位での保持が可能となり両側腹部体幹の筋活動が得られ座位での動的安定性が得られ座位での転倒傾向が軽減した。最終評価時(第18病日)、BRSは右上肢Ⅱ手指Ⅱ下肢Ⅲ、感覚機能は表在・深部共に中等度鈍麻、SIASは34点(麻痺側運動機能3点・体幹機能4点)となり、麻痺側下肢の随意性・体幹機能の改善を認めた。座位姿勢では頚部右側屈・右肩甲帯挙上・骨盤右回旋・体幹右側屈が軽減され、正中位での座位保持が可能となった。活動病棟ADLでは座位保持、移乗動作、立位が見守りとなり、トイレ動作は1人介助にて可能となった。
【結論】本症例は右被殻出血によって、非麻痺側の体幹筋・四肢近位筋の弱化に加え、麻痺側感覚機能の低下により、非麻痺側の過緊張が起こり座位の動的安定性が低下を招いていると考えた。非麻痺側の過緊張により半球間抑制の不均衡が生じ損傷側の脳活動は抑制、麻痺側の活動が制限されると考え非麻痺側への介入を行なった。非麻痺側の過活動を抑制することで、正中位での座位保持が可能となり両側体幹部が賦活、体幹部の安定にて麻痺側上下肢の筋活動を得ることができた。脳血管障害の理学療法では、非麻痺側の過活動を除去し、麻痺側の活動を阻害しないような準備が重要であると考える。
【倫理的配慮、説明と同意】本症例はヘルシンキ宣言に基づき、口頭・書面にて同意を得た。
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