[P-10-02] 重度肺動脈弁狭窄症と複合因子による意識障害を呈した一例〜離床のリスク管理に着目して〜
キーワード:リスク管理,離床,他職種連携
【症例紹介】本症例は,急性硬膜下血腫で入院された80代男性である.併存疾患に先天性心室中隔欠損症や手術適応のある重度肺動脈弁狭窄症を有している.入院前からばち指,四肢冷感,労作時の自覚的な息切れが出現していた.第0病日に自転車走行中に失神し転倒され当院救急科へ搬送された.画像所見より,急性硬膜下血腫と診断され加療目的にて入院となった.入院以降,意識清明であるも低酸素血症を認めており,酸素投与(リザーバー10L/min)がされていた.第2病日より急性期理学療法介入開始.AHAクラスDであることから,併存疾患の影響を考慮し離床を進めていく必要があった.第14病日より日中傾眠傾向や反応速度遅延などの低活動性せん妄の兆候を認めた.第19病日にて慢性硬膜下血腫出現(chronic subdual hematoma:以下,CSDH).第23病日に穿頭術施行.CSDH術後も覚醒不良と食思不振が持続し,第30病日経鼻経管栄養を開始した.CT所見よりCSDHは吸収傾向であり,リハビリ強化目的にて第46病日に回復期病棟へ転棟となった.
【評価とリーズニング】本症例の家族希望は,車椅子座位を獲得し少しでもやり取りができるようになることであった.初期評価時(第46病日),Glasgow Coma Scale(以下,GCS):E1-3V1M6,安静時の呼吸状態は呼吸数18bpm/min,経皮的酸素飽和度(以下,SpO2):88-90%,視診より四肢末梢にばち指とチアノーゼが著明に出現していた.基本動作は寝返り軽介助,起居全介助,端座位軽介助,移乗と車椅子座位は評価困難な状態であった.初期評価の結果,車椅子座位と意思疎通が困難である因子として,①離床に伴う右心不全や意識消失のリスク,②低活動性せん妄,急性期でのCSDHに伴う血腫増大,低酸素血症などの複合的な因子の影響による意識障害が考えられた.
【介入と結果】第54病日よりTilt tableを用いた抗重力位練習を医師同席のもとリスク管理を行いながら実施した.離床時の状態を詳細に管理するため,血圧,呼吸数,SpO2,身体所見(チアノーゼ)を指標とし,安静度を決定した.また,医学的な治療として酸素療法を併用し介入した.その結果,第71病日にGCS:E3-4V2M6,安静時の呼吸状態は酸素投与下(2L/min)にて呼吸数18bpm/min,SpO2:90-93%,視診より四肢末梢のチアノーゼが改善した.意識障害と起立耐性能が改善したことで,30分間車椅子離床可能な座位耐久性の獲得に至った.
【結論】重症度の高い症例に対する抗重力位練習を医師同席のもとリスク管理をしながら実施することで,有害事象なく車椅子座位の獲得に至った.安全に離床を進めていく上で個々の病態把握と医師との連携は不可欠であり,リハビリテーションにおけるどの時期においても離床は重要であると考える.
【倫理的配慮、説明と同意】本発表の内容を説明し紙面で同意を得た.
【症例紹介】本症例は,急性硬膜下血腫で入院された80代男性である.併存疾患に先天性心室中隔欠損症や手術適応のある重度肺動脈弁狭窄症を有している.入院前からばち指,四肢冷感,労作時の自覚的な息切れが出現していた.第0病日に自転車走行中に失神し転倒され当院救急科へ搬送された.画像所見より,急性硬膜下血腫と診断され加療目的にて入院となった.入院以降,意識清明であるも低酸素血症を認めており,酸素投与(リザーバー10L/min)がされていた.第2病日より急性期理学療法介入開始.AHAクラスDであることから,併存疾患の影響を考慮し離床を進めていく必要があった.第14病日より日中傾眠傾向や反応速度遅延などの低活動性せん妄の兆候を認めた.第19病日にて慢性硬膜下血腫出現(chronic subdual hematoma:以下,CSDH).第23病日に穿頭術施行.CSDH術後も覚醒不良と食思不振が持続し,第30病日経鼻経管栄養を開始した.CT所見よりCSDHは吸収傾向であり,リハビリ強化目的にて第46病日に回復期病棟へ転棟となった.
【評価とリーズニング】本症例の家族希望は,車椅子座位を獲得し少しでもやり取りができるようになることであった.初期評価時(第46病日),Glasgow Coma Scale(以下,GCS):E1-3V1M6,安静時の呼吸状態は呼吸数18bpm/min,経皮的酸素飽和度(以下,SpO2):88-90%,視診より四肢末梢にばち指とチアノーゼが著明に出現していた.基本動作は寝返り軽介助,起居全介助,端座位軽介助,移乗と車椅子座位は評価困難な状態であった.初期評価の結果,車椅子座位と意思疎通が困難である因子として,①離床に伴う右心不全や意識消失のリスク,②低活動性せん妄,急性期でのCSDHに伴う血腫増大,低酸素血症などの複合的な因子の影響による意識障害が考えられた.
【介入と結果】第54病日よりTilt tableを用いた抗重力位練習を医師同席のもとリスク管理を行いながら実施した.離床時の状態を詳細に管理するため,血圧,呼吸数,SpO2,身体所見(チアノーゼ)を指標とし,安静度を決定した.また,医学的な治療として酸素療法を併用し介入した.その結果,第71病日にGCS:E3-4V2M6,安静時の呼吸状態は酸素投与下(2L/min)にて呼吸数18bpm/min,SpO2:90-93%,視診より四肢末梢のチアノーゼが改善した.意識障害と起立耐性能が改善したことで,30分間車椅子離床可能な座位耐久性の獲得に至った.
【結論】重症度の高い症例に対する抗重力位練習を医師同席のもとリスク管理をしながら実施することで,有害事象なく車椅子座位の獲得に至った.安全に離床を進めていく上で個々の病態把握と医師との連携は不可欠であり,リハビリテーションにおけるどの時期においても離床は重要であると考える.
【倫理的配慮、説明と同意】本発表の内容を説明し紙面で同意を得た.
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