第33回大阪府理学療法学術大会

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Web Poster

[P-10] P-10

Sun. Jul 11, 2021 8:45 AM - 3:30 PM Web Poster:P-10 (webポスター会場)

座長:太田 幸子(国立循環器病研究センター)、村田 宏之(千里リハビリテーション病院)

[P-10-03] 頚椎症性脊髄症を発症し、歩行能力が低下した症例~骨盤アライメントに着目して~

*金子 昂平1、木薗 憂也1、酒井 雄太1、吉川 創1 (1. わかくさ龍間リハビリテーション病院)

【症例紹介】
 70歳台の男性.病前ADLは自立していた.両上下肢の痺れと脱力感が出現し,C4/5の頚椎症性脊髄症と診断され第7病日に前方固定術を施行.第40病日リハビリ目的で当院転院となる.

【評価とリーズニング
 第50病日,頚椎カラー装着.両手指足趾の中等度の痺れ.MMTは体幹屈曲2・回旋2,両股関節伸展3・外転2.10m歩行15.8秒.TUG35.6秒.BBS12点.触診では立位時に脊柱起立筋の過緊張を認めた.立位時,骨盤が前傾していることにより正常は股関節軸後方を通る床反力作用線が股関節軸前方へ偏移していた.また,歩行時は骨盤が前傾し前方重心となり,LR~MSt時に両下肢のフットスラップと反張膝・TSt時の骨盤後方回旋が生じており,歩行器歩行見守りレベルであった.

【介入と結果】
 筋力増強運動はOKCから実施し,立位アライメントの改善と共にCKCでの運動へ移行した.骨盤前傾位に対して,骨盤を中間位に保持する腹直筋・大殿筋の筋力増強運動と動作時の協調性向上を目的に床上動作練習を実施した.また,課題指向型アプローチとして重心移動・筋発揮を促すためにステップ練習・歩行練習を実施した.
 第170病日,頚椎カラー非装着.両手指足趾の軽度の痺れ.MMTは体幹屈曲4・回旋3,両股関節伸展4・外転4.10m歩行7.2秒.TUG8.44秒.BBS51点.触診では立位時の脊柱起立筋の過緊張は改善し,骨盤が正中位となった.また,歩行時のフットスラップと反張膝の改善・骨盤の後方回旋の改善を認め,杖歩行自立に至った.

【結論】
 腹筋群の筋力低下は背筋群の過緊張をおこし,歩行時の股関節周囲筋の筋発揮不良を招くことが報告されている.本症例は,立位時,骨盤を中間位に保持する腹直筋・大殿筋の筋力低下により骨盤が前傾し,脊柱起立筋の過緊張を認めた.歩行時,LR~MSt時のフットスラップ・反張膝は,股関節屈曲,膝関節伸展,足関節底屈方向に外的モーメントが働いたため生じていたと考えた.また,TSt時の骨盤後方回旋は,両大殿筋と両腹斜筋の筋力低下と前方推進力の低下から対側下肢の振り出しの代償として生じていたと考えた.治療介入後,腹直筋・両大殿筋の筋力向上から骨盤の正中位保持が可能となり,腹筋群・脊柱起立筋の協調性が向上したと考える.また,脊柱起立筋の緊張が改善し,歩行時の体幹・股関節周囲の筋発揮が向上したと考える.LR~MSt時では床反力作用線が股関節軸後方,足関節軸前方に偏移したことでアンクルロッカーや下腿前傾が出現し、フットスラップ・反張膝が改善され,さらに前方推進力が生じたことにより骨盤の後方回旋が改善され、歩行が安定し杖歩行自立に至ったと考える.
 本症例を通して,筋力低下により生じる骨盤の異常アライメントは体幹・股関節の協調性低下と歩行の安定性低下をもたらし,アライメントの改善により,体幹・股関節の協調性が改善し、歩行能力向上につながったと考えられた.

【倫理的配慮、説明と同意】
 今回の発表に際し、対象者に趣旨等説明し同意を得ている。

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