第33回大阪府理学療法学術大会

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Web Poster

[P-2] P-2

Sun. Jul 11, 2021 8:45 AM - 3:30 PM Web Poster:P-2 (webポスター会場)

座長:木下 篤(さくら会病院)

[P-2-01] 視力障害とPusher現象を呈した重度片麻痺患者に対し、聴覚刺激を用いて座位姿勢が改善した一症例

*鈴木 光1、辻中 椋1、濱西 世奈1、吉谷 貴大1、泉谷 佑美1 (1. 泉佐野優人会病院)

【症例紹介】80歳代、男性。診断名は右内頸動脈閉塞による脳梗塞。既往歴は視力障害、糖尿病、高血圧、前立腺肥大、認知症であった。現病歴は体が左へ傾く、脱力みられA院受診し、第29病日目、当院回復期リハビリテーション病棟へ入院となった。

【評価とリーズニング】初期評価、FIM24点、JCSⅠ-1、BRS手指Ⅰ、上肢Ⅰ、下肢 Ⅰ、SIAS21点、SIAS-M(0-0、0-0-0)、機能的バランスグレードzero、SCP座位姿勢にて2.0点、FACT0点。脳画像より、梗塞内出血がみられ、上頭頂小葉、下頭頂小葉、放線冠、尾状核、上縦束、レンズ核、上側頭回の損傷がみられる為、皮質脊髄路、皮質網様体脊髄路の損傷、身体失認、半側空間無視等の出現が考えられる。視力障害がある為、高次脳機能検査は実施困難であったが、車椅子座位にて頭頸部軽度伸展右回旋、骨盤後傾、体幹軽度左回旋、視線は常に右上方を見ており左側方への注意がみられない為、半側空間無視等の出現が考えられる。重度片麻痺を呈しており、座位保持は全介助にてPusher現象を認めた。

【介入と結果】左下肢にKAFOを装着し、後方介助にて立位保持練習中、半側空間無視側前方から鈴を鳴らし聴覚刺激を実施した。最終評価、FIM33点、JCS0、BRS手指Ⅰ、上肢Ⅱ、下肢Ⅱ、SIAS27点、SIAS-M(0-0、0-0-0)、機能的バランスグレードfair、SCP座位姿勢にて0点、FACT3点。姿勢観察として、頭頸部屈曲伸展回旋中間位、骨盤後傾、体幹正中位であり、左側方への注意を認める。自己にて座位保持が可能となり、Pusher現象は改善した。

【結論】本症例は既往歴に視覚障害がある為、視覚的フィードバックが行えなかった。先行研究では聴覚的な刺激が視覚探索を喚起させ、半側空間無視を改善するのに有効(Farah et al.1989,Robertson et al.1998)であり、聴覚入力により視覚認知が促進される(Frassinetti et al.2002,Vleet et al.2006)とされている。また、メトロノームによる反復的、規則的に与えられるリズム聴覚刺激は半側空間無視を改善させるひとつの方法として有効とされている(宮崎ら 2009)。本症例は同条件では無いが、音楽的側面や既知感、容易性から今回は鈴を用いた。左下肢にKAFOを装着し、後方介助にて半側空間無視側前方から鈴を鳴らし聴覚刺激を用いて、音源方向に注意を促した立位保持練習や歩行練習を実施した。鈴を用いた無視側からの聴覚刺激により無視側への視覚探索を促進し、左側方への注意を高めた可能性がある。また、立位保持や歩行練習を行ったことで麻痺側皮質網様体脊髄路が賦活され、腸腰筋、外腹斜筋、内腹斜筋の機能が向上し座位保持の持久性、安定性の向上に繋がった可能性がある。

【理論的配慮、説明と同意】ヘルシンキ宣言の理念に基づき、対象者の人権配慮には十分な配慮を行い、症例報告の目的を十分に理解を得られるように説明と同意を行った。

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