[P-2-03] 重度片麻痺とプッシャー現象を認め注意障害により端座位の安定性向上に難渋した一症例
【症例紹介】左利きの80代後半女性、X年Y月Z日左被殻出血と診断され、同日に脳内血腫除去術施行。Z+31日より当院転院し、理学療法を開始。発症前ADLはケアハウスに入所しシルバーカー歩行自立、その他概ね見守りから修正自立。家族HOPEは同系列の特養入所、NEEDは3食リクライニング車椅子での経口摂取であった。今回、高次脳機能障害が治療,ADLの阻害因子となり難渋したため報告する。
【評価とリーズニング】Z日の頭部CTでは約45㎖の出血で被殻出血CT分類Ⅳaであった。Z+31日の頭部CTでは上縦束、被殻から内包前後脚にかけて出血痕が強く、視床外側を一部掠る広範囲の低吸収域を確認。理学療法評価はJapan Coma ScaleⅠ-2,Brunnstrom Recovery stage(以下BRS)上肢・下肢Ⅱ・手指Ⅰ,Stroke Impairment Assessment Set(以下SIAS)は18/76点,長谷川式簡易知能評価スケール6/30点,表在,深部感覚は中等度から重度鈍麻,Burke Lateropulsion Scale(以下BLS)12/17点でプッシャー現象の影響が大きく、麻痺側への崩れが著明で座位保持困難であった。日本版Behavioural inattention testは精査困難。普段より終始左を向き、声掛けに対して一時的に右を向くが持続せず半側空間無視 (以下USN)と注意障害を認めた。体性感覚,視覚,前庭覚の感覚統合不全により身体,視覚的垂直軸の歪みが生じ、プッシャー現象を認めたと推察する。動的課題で介助量が増大し、FIM18/126点で食事は3食経管栄養。
【介入と結果】介入初期は座位でのプッシャー現象が強く、KAFOを使用し立位,歩行練習中心に介入。Z+76日にBLS9/17点と改善を認め、支持物があれば座位保持可能となった。しかし、注意の持続が困難で、声掛けがないと座位保持困難。そこで狭所,暗所等環境面に配慮し立位練習中心に介入した。その結果、声掛けなしで端座位保持が可能となった。Z+104日でBRS下肢Ⅱ~Ⅲ,SIAS23/76点,BLS5/17点と改善を認め、端座位保持は数秒であれば近位見守りに改善した。3食経口摂取可能となり、昼食のみ介助下でリクライニング車椅子経口摂取を獲得しFIM25/126点に改善した。
【結論】運動麻痺,プッシャー現象に対する理学療法として早期からの立位,歩行練習が推奨されているが注意障害に対する有効な治療法は示されておらず臨床上しばしば難渋する。Kinsbourneらは注意機能には受動的注意と能動的注意のバランスが重要であると報告している。受動的注意ネットワークは劣位脳半球において体積が有意に大きく、本症例は受動的注意と能動的注意のバランスが崩れ、右方向への注意の持続が困難であると推察した。狭所暗所は周囲の聴覚的,視覚的外乱刺激が少なく、正中位での活動の持続を可能にさせ、結果端座位保持獲得に繋がったと考える。
【倫理的配慮、説明と同意】患者家族にはヘルシンキ宣言に基づき発表趣旨を説明し書面にて同意を得た。
【評価とリーズニング】Z日の頭部CTでは約45㎖の出血で被殻出血CT分類Ⅳaであった。Z+31日の頭部CTでは上縦束、被殻から内包前後脚にかけて出血痕が強く、視床外側を一部掠る広範囲の低吸収域を確認。理学療法評価はJapan Coma ScaleⅠ-2,Brunnstrom Recovery stage(以下BRS)上肢・下肢Ⅱ・手指Ⅰ,Stroke Impairment Assessment Set(以下SIAS)は18/76点,長谷川式簡易知能評価スケール6/30点,表在,深部感覚は中等度から重度鈍麻,Burke Lateropulsion Scale(以下BLS)12/17点でプッシャー現象の影響が大きく、麻痺側への崩れが著明で座位保持困難であった。日本版Behavioural inattention testは精査困難。普段より終始左を向き、声掛けに対して一時的に右を向くが持続せず半側空間無視 (以下USN)と注意障害を認めた。体性感覚,視覚,前庭覚の感覚統合不全により身体,視覚的垂直軸の歪みが生じ、プッシャー現象を認めたと推察する。動的課題で介助量が増大し、FIM18/126点で食事は3食経管栄養。
【介入と結果】介入初期は座位でのプッシャー現象が強く、KAFOを使用し立位,歩行練習中心に介入。Z+76日にBLS9/17点と改善を認め、支持物があれば座位保持可能となった。しかし、注意の持続が困難で、声掛けがないと座位保持困難。そこで狭所,暗所等環境面に配慮し立位練習中心に介入した。その結果、声掛けなしで端座位保持が可能となった。Z+104日でBRS下肢Ⅱ~Ⅲ,SIAS23/76点,BLS5/17点と改善を認め、端座位保持は数秒であれば近位見守りに改善した。3食経口摂取可能となり、昼食のみ介助下でリクライニング車椅子経口摂取を獲得しFIM25/126点に改善した。
【結論】運動麻痺,プッシャー現象に対する理学療法として早期からの立位,歩行練習が推奨されているが注意障害に対する有効な治療法は示されておらず臨床上しばしば難渋する。Kinsbourneらは注意機能には受動的注意と能動的注意のバランスが重要であると報告している。受動的注意ネットワークは劣位脳半球において体積が有意に大きく、本症例は受動的注意と能動的注意のバランスが崩れ、右方向への注意の持続が困難であると推察した。狭所暗所は周囲の聴覚的,視覚的外乱刺激が少なく、正中位での活動の持続を可能にさせ、結果端座位保持獲得に繋がったと考える。
【倫理的配慮、説明と同意】患者家族にはヘルシンキ宣言に基づき発表趣旨を説明し書面にて同意を得た。
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