第33回大阪府理学療法学術大会

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Web Poster

[P-3] P-3

Sun. Jul 11, 2021 8:45 AM - 3:30 PM Web Poster:P-3 (webポスター会場)

座長:桑原 裕也(岸和田リハビリテーション病院)

[P-3-02] 前大脳動脈解離による脳梗塞を生じた症例における早期歩行獲得の経過

*山浦 大輝1 (1. 千里リハビリテーション病院)

【症例紹介】
 50歳代男性。令和2年8月X日外出先で突然の構音障害、左下肢麻痺が出現。前大脳動脈領域に梗塞を認めた。保存療法にて加療後、発症後19日目に当院入院。

【評価とリーズニング】
 発症当日の拡散強調画像(diffusion weighted- image)では、左前部領域を除く両側の帯状回、右脳梁膝~脳梁膨大部・左脳梁体部~脳梁膨大部、右中心前回・右中心後回に高信号を認めた。Brunnstrom stage(以下、Brs):左上下肢stageV。靴紐を結ぶ際に拮抗失行あり。感覚:左股関節・膝関節・足関節に位置覚の中等度鈍麻。起居・移乗動作:自発性低下のため軽介助レベル。日中はベッド上で臥床傾向。排尿が少ないことから、飲水の促しや、トイレ誘導が必要であった。座位での体重移動:前方や側方への傾きに対し、立ち直り困難。1週間後、起居・移乗動作:見守りレベル。閉眼での起立動作:伸展相に両側の股関節・膝関節の協調的な伸展が行えず、後方へ転倒傾向。片膝立ち:左支持にて股関節屈曲位となり保持困難。立位での上肢前方リーチ課題:足関節戦略乏しく、転倒予防のため介助を要した。独歩におけるストライド長:右47㎝、左34㎝。10m歩行:30秒。入院当初、帯状回の梗塞による情動や行動に関わる辺縁系の問題・空間認知の障害が予想された。併せて、脳梁の梗塞による左右の線維連絡障害にて、両側下肢の関節運動を伴う閉眼での起立動作困難や、左下肢位置覚低下による片膝立ち困難・独歩における左ストライド長の低下に影響を及ぼしている事が推察された。

【介入と結果】
 姿勢定位の問題に対し、鏡を使用し壁支持での膝立ち・片膝立ち保持を実施。動作の安定化に伴い、支持物なしの条件下でも実施。また、動作イメージ獲得のため開眼・閉眼を交えながらの手引きでの起立・歩行練習を実施。入院2週間後、位置覚:股関節・足関節軽度鈍麻、膝関節正常。上肢前方リーチ課題:27cm。10m歩行:13.5秒。ストライド長:右66㎝、左62㎝。閉眼での起立動作は可能となった。入院4週間後、Brs:左上下肢stageⅥ。足関節位置覚:正常。左右の股関節に対し相反性の課題である片脚立位動作は両側共に1秒未満であった。階段昇段動作では、左支持において股関節・膝関節が屈曲し、右足部の引っかかりを認めた。歩行時には「左脚がどの位曲がってるか分からない」と訴えあり。これに対し、視覚で左足の位置を確認しながら段差ステップ・階段昇降を実施。7週目には、片脚立位動作:右27秒・左11秒。階段手すりなしで院内移動・屋外歩行も自立。歩行だけでなく、走行動作も可能であった。

【結論】
 本症例において、視覚情報と空間情報の統合に関わる楔前部は残存しており、視覚フィードバックを用いた動作練習を中心に介入した。走行動作ができたことは、大脳での感覚情報処理に比べ優位に作用する、脊髄小脳路の残存も早期歩行獲得の一因に繋がったと考える。

【倫理的配慮、説明と同意】
 本症例にはヘルシンキ宣言に基づき十分な説明を行ない、同意を得た。

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