第33回大阪府理学療法学術大会

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Web Poster

[P-3] P-3

Sun. Jul 11, 2021 8:45 AM - 3:30 PM Web Poster:P-3 (webポスター会場)

座長:桑原 裕也(岸和田リハビリテーション病院)

[P-3-04] 動作時の著しい筋緊張亢進により、移乗や歩行獲得に難渋した一症例

*大橋 正樹1、常盤 尚子1 (1. 社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院)

【症例紹介】

60歳代女性。X日左半身の動きにくさを自覚し救急搬送。右視床出血を認め保存的加療。X+31日当院に転院し、同日より理学療法開始。発症前ADLは自立。慎重かつ消極的な性格。方向性は沖縄の施設。

【評価とリーズニング】

初期評価(X+31~33日)BRS:左上肢Ⅱ、手指Ⅰ、下肢Ⅱ~Ⅲ。MMSE:30点。感覚:左下肢表在・深部重度鈍麻。MAS:左腸腰筋・ハムストリングス・下腿三頭筋1+。ROM(R/L):膝関節伸展0°/0°、足関節背屈20°/10°。筋力(R/L):膝伸展筋力18.8kgf/測定困難。FIM:64点(運動38)。動作面は起居:軽介助。移乗:起立時に左股・膝関節過屈曲により足底接地困難で軽介助。移動:車椅子全介助。歩行は長下肢装具(KAFO)使用し、振り出し中等度介助。

【介入と結果】

入院翌日より体幹や股関節周囲筋の賦活目的に起立練習、本人用KAFOで歩行練習を中心に介入。移乗はL字柵を使用、足部の位置確認や手すりは押すように起立や方向転換を行うよう指導しX+49日自立。動作時の屈筋群の筋緊張は高く、X+59日筋弛緩剤開始するも著変なし。KAFOでの歩行は自己での振り出しが可能となり、ロックオフでは徐々に支持が得られ金属支柱付き短下肢装具(M-AFO)を評価。しかし、左下肢の筋緊張亢進による立脚期の安定性低下や、精神的な不安による発汗量や呼吸数の増加も著明に認め距離延長困難。そこで不安感の軽減を図るため、セパレートカフ式長下肢装具(semi-KAFO)での歩行練習に変更。適宜M-AFOも行うが依然筋緊張の軽減に至らず、semi-KAFOと4点杖を使用し3動作揃え型での動作を反復。他職種でも装具の着脱、装着状態でのトイレ動作練習を繰り返し行いX+149日自室~トイレ間自立。その後、施設先での生活を想定した応用動作練習を行い75m連続歩行可能となる。
最終評価(X+163~166日)BRS:左上肢Ⅱ、手指Ⅲ、下肢Ⅲ~Ⅳ。感覚:左下肢表在中等度鈍麻。MAS:初期評価と同部位1。筋力(R/L):膝伸展筋力25.2kgf/2.4kgf。FIM:109点(運動74)。動作面は起居~移乗:自立。移動:日中のみsemi-KAFO+4点杖自立、終日車椅子自立。

【結論】

本症例は安静時の筋緊張は軽度も動作時に著明な亢進を認め、足底接地困難により立位時の支持性が得られず移乗や歩行獲得に難渋した。歩行においてはKAFOで運動量を確保でき、介助量が軽減したためカットダウンを試みるも、精神的な不安が強く安定性低下を認めた。そこで早期より統一した動作指導を行い、課題特異型訓練や目的指向型アプローチにて動作の定着を促すことで不安感や介助量の軽減に至った。また増田はsemi-KAFOについてKAFOに比べ装具着脱が容易、歩行でのADL自立の可能性があると述べており、これらの歩行練習を導入したことにより歩行やトイレ動作の自立獲得に繋がったと考える。

【倫理的配慮、説明と同意】

対象者には本報告の趣旨を説明し、同意を得た。

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