第33回大阪府理学療法学術大会

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Web Poster

[P-5] P-5

Sun. Jul 11, 2021 8:45 AM - 3:30 PM Web Poster:P-5 (webポスター会場)

座長:松村 彩子(星ヶ丘医療センター)

[P-5-01] 脊髄不全損傷の再受傷者に対して免荷装置を用いた床上歩行練習を行い屋内歩行が可能となった症例

*大賀 寛人1、菊田 瑞樹1、松本 浩希1 (1. 市立吹田市民病院)

【症例紹介】
 70代後半の男性、身長174cm、体重88kg。20年前に後縦靱帯骨化症が起因で転倒し、C5レベルの脊髄不全損傷を受傷した。18年前から屋内は伝い歩き、屋外は歩行車を使用して移動が可能となった。X日に屋外で転倒し、C5-C6レベルの骨傷性脊髄不全損傷を受傷し他院へ入院した。X+7日に頚椎後方固定除圧術とハローベスト固定を施行され、X+23日に当院へ転院した。
【評価とリーズニング】
 Asia Impairment ScaleはBで、C6以下のMMTは1〜2、触覚や痛覚は中等度鈍麻、深部感覚は軽度鈍麻であった。腱反射は減弱しており、筋緊張はMASで1であった。握力は両側とも5㎏未満、膝関節伸展筋力は右が4.9kgf、左が7.6kgfであった。座位保持や立位保持は困難で、起居や移乗は全介助であった。
 X+36日にハローベストを除去されたが、X+40日に糞便性イレウスによる敗血症となった。X+57日に全身状態が安定し回復期リハビリテーション病棟へ転棟した。運動機能や動作能力に著明な変化はなかった。
 脊髄不全損傷者は受傷後2ヶ月時点の能力で予後予測できるとされている。本症例の動作能力では、屋内歩行の自立は困難と予測された。また、脊髄損傷の再受傷のため獲得できる動作能力はさらに低くなり、歩行自体が困難ではないかと考えられた。しかし、不全損傷者の多くはグレードが改善することや、痛覚の残存は筋力の回復に有利であるとされており、筋力や動作能力の向上を目的に介入を開始した。
【介入と結果】
 介入当初は筋力強化練習や座位練習、ティルトテーブルを用いた立位練習を中心に実施した。X+84日から吊り上げ式体重免荷装置を用いた35kgの部分免荷と歩行器を併用した立位が可能となった。以降は免荷装置を用いた床上歩行練習へ介入内容を変更した。免荷の程度は膝関節が軽度屈曲位で体重を支持できるように負荷量を調整した。X+140日から免荷装置を用いずにピックアップ歩行器での歩行が可能となった。
 最終評価時(X+196日)、Asia Impairment ScaleはCで、C6以下のMMTは3、触覚や痛覚は軽度鈍麻へ改善した。握力は右が9.9㎏、左が5.2㎏、膝関節伸展筋力は右が15.6kgf、左が15.0kgfへ向上した。起居や移乗は修正自立で可能となり、歩行はピックアップ歩行器を用いて屋内を見守りで可能となった。連続歩行距離は20m程度で、10m歩行テストは25秒であった。屋内移動は歩行器と車椅子を併用し、屋外移動は電動車椅子を使用し、自宅退院となった。
【結論】
 本症例の経過では歩行自体が困難ではないかと考えていたが、退院時には見守り下での屋内歩行を獲得が出来た。その一因として、免荷装置を用いた床上歩行は、介助量の軽減と運動負荷を調節した状態での課題指向型練習が可能であり、介入手段として有用であったと考える。また、脊髄不全損傷の再受傷例においても、神経可塑性による筋力強化や歩行獲得の可能性があることが示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】
 ヘルシンキ宣言に基づき説明を行い、同意を得た。

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