第33回大阪府理学療法学術大会

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Web Poster

[P-9] P-9

Sun. Jul 11, 2021 8:45 AM - 3:30 PM Web Poster:P-9 (webポスター会場)

座長:川村 知史(星ヶ丘医療センター)

[P-9-01] 挫滅症候群治療後に歩行能力及びADL低下が残存した症例への介入経験

*福本 拓見1、加古川 直己1 (1. 岸和田リハビリテーション病院)

【症例紹介】

 挫滅症候群は,四肢が長時間の圧迫や窮屈な肢位を強いられた際に骨格筋が損傷され,その後にショックや急性腎不全といった全身症状を呈する外傷性疾患である.挫滅症候群に関するリハビリテーションは,長期的な介入が必要であり,主に挫滅筋の筋力回復が重視されているが,歩行能力やADLの経過に焦点を当てた報告は少ない.

 今回、挫滅症候群を呈し、治療後も廃用症候群による歩行能力・ADLが著しく低下した症例を担当した.本症例に対して継続的な介入を行った結果,歩行を再獲得し、さらに自宅復帰を達成できたため,その臨床経過を報告する.

 症例は70歳代の男性で,自宅トイレ内で泥酔状態のところを発見されるも,歩行困難であったため救急搬送となる.前院にて挫滅症候群(左下肢の圧挫傷)と診断され,受傷後6週目に当院へ入院した.



【評価とリーズニング】

 初期評価として,FIMは56点で院内移動は車椅子介助であった.Functional Ambulation Categories(以下,FAC)は1,筋力は大腿四頭筋MMT(右/左)4/1で左側に著明な低下を認めた.また,本症例の希望は「何も使わず歩けるようになって家に帰りたい」であり,自宅復帰には階段昇降が必須であった.

 本症例の主な問題点として,歩行及び階段昇降時に膝折れを認め,安全性・安定性が低下していた.その原因として,左大腿四頭筋の筋力低下による左下肢の支持性低下が考えられた.評価項目は,FIM,FAC,10MWT,TUG,左膝伸展筋力とし,これらを4週間毎に測定した.なお,膝伸展筋力はハンドヘルドダイナモメーターを使用し,2回測定の平均値とした.



【介入と結果】

 介入は週7回,1日約3時間行い,左大腿四頭筋に対する筋力強化や歩行練習,ADL練習を中心に実施した.入院時から4週間毎の帰結変化として,FIMは56点,93点,96点,117点とADL向上を認めた.またFACは1,2,3,5で,10MWTはそれぞれ,23.2秒,21.7秒,11.1秒,9.4秒,TUGは25.6秒,27.9秒,12.4秒,10.7秒であり,歩行能力が改善した.左膝伸展筋力は1.4kg,1.8kg,3.9kg,7.2kgと経時的に改善した.本症例は,入院10週目でフリーハンドでの歩行自立及び階段昇降の修正自立を獲得し,13週目で希望であった自宅復帰を達成した.



【結論】

 単一症例であるが,挫滅症候群治療後に歩行能力及びADL低下が残存した症例において,積極的な筋力強化や歩行練習,ADL練習を行うことで,歩行再獲得やADLを向上できることが示唆された.



【倫理的配慮,説明と同意】

 ヘルシンキ宣言に基づき,本症例に対して内容と目的を口頭にて十分に説明し,同意を得た.

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