[P-9-02] 左下腿蜂窩織炎後の運動恐怖感により立位・歩行に難渋した一症例について
【症例紹介】
四肢の疼痛経験を誘因として運動恐怖感を有する患者を担当する機会は少なくない。運動恐怖感は慢性疼痛の誘因や姿勢制御の不安定性を助長すると報告されている。今回、左下腿蜂窩織炎を契機とした運動恐怖感により、立位・歩行に難渋した症例を担当した。症例は60歳代女性で左股関節機能低下(JOAスコア:52点、化膿性股関節炎の診断)を有していたが、入院前ADLは独歩にて自立。2020年X月Y日に熱発、下肢痛が出現し症状緩解なくY+2日に精査・加療目的に当院入院となった。A群溶血性レンサ球菌による蜂窩織炎と診断、抗菌薬投与が開始となり、Y+11日から前任の理学療法が開始、Y+19日に本症例の担当となり介入を継続した。
【評価とリーズニング】
担当時の下肢筋力(Hand Held Dynamometer、以下HHD)は股屈曲(右・左):0.28Nm/kg・0.00Nm/kg、膝伸展:0.28Nm/kg・0.14Nm/kg、運動恐怖感はTampa scale for kinesiophobia(以下TSK):48点(Cut off:37点)、立位時の下肢荷重量(体重:45.0kg)は静止立位(右・左):20kg・7kg、最大荷重:30kg・15kg、安静時・体動時痛はNumerical Rating Scale(以下NRS):4点、ADLはFunctional Independence Measure(以下FIM):70点で歩行は不可能であった。本症例の病識と治療経過は良好で運動の必要性も理解されていたが、運動恐怖感が各動作の主な制約因子であると推察し以下の介入を実施した。
【介入と結果】
下肢筋力増強練習に併せて体重計や鏡による外的注意を用いた立位・歩行練習を進めた。その際、動画撮影を行い本人と動画供覧の下、口頭及び視覚にて結果のフィードバックを行った。Y+36日に左股関節加療の為、他科転床となり担当を終了した。担当終了時のHHDは股屈曲:0.39Nm/kg・0.06Nm/kg、膝伸展:0.45Nm/kg・0.15Nm/kg、運動恐怖感はTSK:30点、立位時の下肢荷重量は静止立位:30kg・12kg、最大荷重:40kg・16kg、安静時痛はNRS:1点、体動時痛はNRS:3点、ADLはFIM:87点と各種評価結果の向上を認め、10mの平行棒内歩行が見守りで実施可能となった。担当変更後も理学療法継続し、Y+58日に両ロフストランド杖歩行にて自宅退院に至った。
【結論】
本症例では筋力低下、疼痛に併せて運動恐怖感が動作の制約因子であり、外的注意を用いたフィードバックを行い運動恐怖感の軽減、動作能力の改善を認めた。運動器疾患患者においても運動学的評価に併せて、動作の阻害要因である運動恐怖感を定量的に評価し介入方法を検討する必要があると考える。一方で運動恐怖感を有する他患者との比較や内的注意によるフィードバックとの差異は今後検証が必要と考える。
【倫理的配慮、説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき文書及び口頭にて説明し自由意思による同意を得た。また、発表にあたり開示すべきCOI関係にある企業等はない。
四肢の疼痛経験を誘因として運動恐怖感を有する患者を担当する機会は少なくない。運動恐怖感は慢性疼痛の誘因や姿勢制御の不安定性を助長すると報告されている。今回、左下腿蜂窩織炎を契機とした運動恐怖感により、立位・歩行に難渋した症例を担当した。症例は60歳代女性で左股関節機能低下(JOAスコア:52点、化膿性股関節炎の診断)を有していたが、入院前ADLは独歩にて自立。2020年X月Y日に熱発、下肢痛が出現し症状緩解なくY+2日に精査・加療目的に当院入院となった。A群溶血性レンサ球菌による蜂窩織炎と診断、抗菌薬投与が開始となり、Y+11日から前任の理学療法が開始、Y+19日に本症例の担当となり介入を継続した。
【評価とリーズニング】
担当時の下肢筋力(Hand Held Dynamometer、以下HHD)は股屈曲(右・左):0.28Nm/kg・0.00Nm/kg、膝伸展:0.28Nm/kg・0.14Nm/kg、運動恐怖感はTampa scale for kinesiophobia(以下TSK):48点(Cut off:37点)、立位時の下肢荷重量(体重:45.0kg)は静止立位(右・左):20kg・7kg、最大荷重:30kg・15kg、安静時・体動時痛はNumerical Rating Scale(以下NRS):4点、ADLはFunctional Independence Measure(以下FIM):70点で歩行は不可能であった。本症例の病識と治療経過は良好で運動の必要性も理解されていたが、運動恐怖感が各動作の主な制約因子であると推察し以下の介入を実施した。
【介入と結果】
下肢筋力増強練習に併せて体重計や鏡による外的注意を用いた立位・歩行練習を進めた。その際、動画撮影を行い本人と動画供覧の下、口頭及び視覚にて結果のフィードバックを行った。Y+36日に左股関節加療の為、他科転床となり担当を終了した。担当終了時のHHDは股屈曲:0.39Nm/kg・0.06Nm/kg、膝伸展:0.45Nm/kg・0.15Nm/kg、運動恐怖感はTSK:30点、立位時の下肢荷重量は静止立位:30kg・12kg、最大荷重:40kg・16kg、安静時痛はNRS:1点、体動時痛はNRS:3点、ADLはFIM:87点と各種評価結果の向上を認め、10mの平行棒内歩行が見守りで実施可能となった。担当変更後も理学療法継続し、Y+58日に両ロフストランド杖歩行にて自宅退院に至った。
【結論】
本症例では筋力低下、疼痛に併せて運動恐怖感が動作の制約因子であり、外的注意を用いたフィードバックを行い運動恐怖感の軽減、動作能力の改善を認めた。運動器疾患患者においても運動学的評価に併せて、動作の阻害要因である運動恐怖感を定量的に評価し介入方法を検討する必要があると考える。一方で運動恐怖感を有する他患者との比較や内的注意によるフィードバックとの差異は今後検証が必要と考える。
【倫理的配慮、説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき文書及び口頭にて説明し自由意思による同意を得た。また、発表にあたり開示すべきCOI関係にある企業等はない。
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